LIFESTUDIO AOYAMA
photo:gomei

子供の後ろ姿には、不思議と心を動かされる力があります。
この日も、大きなリンゴのバスケットに手を伸ばす１歳の背中を見ながら、レンズ越しに物語を感じていました。
顔が見えないからこそ、母親は「いったい何を見ているのだろう」と想像を巡らせる。
写真は、ただの記録ではなく、見る人それぞれの記憶や感情を呼び覚ますものになるのだと改めて思います。

大きなリンゴと小さな体の対比は、成長の儚さを際立たせます。まだ小さな手足でありながら、自分の世界を探ろうとする姿。そ
の横顔を想像するだけで、母親はきっと胸が温かくなるはずです。
子どもが小さな背中で見せる挑戦や好奇心は、これからの日々を象徴するものでもあります。

背景にあるのは、シンプルな壁。何もないように見えるその空間も、実は撮影のために一からつくり上げたものです。
こんな写真を撮ってみたくて、インテリア改善から始めました。
余計な情報を削ぎ落とすことで、子どもとリンゴの存在感が引き立ちます。
この「シンプルさ」がいかに写真の余白を生み、想像力をひらくかを学ぶきっかけになりました。

この一枚は日常の延長にある特別な景色になると思います。
後ろ姿を見ただけで、その子の声や仕草を思い出せる。
成長して振り返ったとき、本人にとっても「こんなに小さかったんだ」と笑顔になるかもしれません。

大きなリンゴと小さな背中。
そのコントラストに宿る物語は、言葉以上に雄弁です。
写真を撮る側としても、こうした瞬間に立ち会えることは大きな喜びであり、未来への贈り物を届ける使命だと感じます。