フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

引き算

投稿日:2018/4/30

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あなたの笑顔はとっても素敵だけれど
 
よく笑う子でした。本当にずっと笑っていた印象です。
笑いすぎてママさんが心配しちゃうくらいに。
私はグラグラしている前歯が取れちゃうんじゃないかと心配しました。
 
一人っ子の為、3シーンで作られる原本はもちろん本人のシーンのみで独占できます。
いかに75枚にバリエーションを持たせるか、ということはライフスタジオのカメラマンなら誰しもが考えます。
1枚を綺麗に作ることも大切ですが、75枚という原本は流れるようなストーリーを収めることができるのが特徴です。
 
表情は写真を作る上で重要な構成要素な一つです。
表情ひとつで写真の印象は変わりますし、見る人に被写体の雰囲気や魅力を伝えることもできると思います。
そこで、今回はとってもよく笑う子。笑顔の写真は正直お腹いっぱいでした。
バリエーションのことを考えても、笑顔以外の写真が欲しいと思っていました。
 
緊張してなかなか笑顔を出してあげることが難しい状況の方が多い中、
笑顔が多すぎて困るなんて、贅沢な悩みかもしれません。
 
笑顔いっぱいの可愛い子でしたが、普通に考えれば彼女の日常で四六時中笑顔でいることはないでしょう。
ただ、笑顔以外の写真を!というより、笑顔以外の顔も彼女の顔なんじゃないかと思いました。
3シーン目で黒いジャケットを羽織り、帽子を被ってもらい少しクールになった彼女に「帽子が曲がってるよ」と指示で動作に集中させるように呼びかけました。
 
間にはガラスを挟みこっそりのぞき見しているだけのように。
その時、今まで見てこなかった表情の彼女を写すことができました。
 
写真を作るまでに被写体から感じたイメージやコンセプトを作ることが大切です。
それは「被写体を観察し、被写体らしさを写すこと」で、その子だけの写真になるからです。
「らしい写真」とは被写体に寄り添っているからこそ、らしさを引き出された写真となり、親御さんからしたら一番嬉しいものではないでしょうか。
 
しかし今回「私は笑顔こそが彼女らしい」と感じていたにも関わらず、「被写体らしくない写真を撮ること」をしました。
となると、今回撮った「らしくない写真」は被写体に寄り添えていないことになるのでしょうか。
 
私は「撮影を楽しむこと」をモットーにいつだって全力で子供と接することを目標に、また実現させているつもりです。
「撮影を楽しむこと」は自分が楽しむことで子供も巻き込んで「楽しませること」に変えようとしています。
楽しませる上で「どんなことをしたら喜ぶのか?」「なにが好きなのか?」「どんな子なのか?」相手を観察して知ろうと呼び掛けを続けることは自然にされます。
観察(どんな子?)と提案(質問)と少しのボケ(反応を探る)を繰り返して被写体を知っていくプロセスが生まれます。
そしてお互いが楽しんでいる時に心が通じたと感じることができるのです。
楽しむこと→楽しませることは、被写体に寄り添いたいと思う私なりの方法です。
 
笑顔いっぱいの撮影だった今回ですが、笑顔は私から引き出したものではありません。
この笑顔は彼女から湧き出たものです。被写体の彼女が率先して楽しんでくれたのです。
では、今回私にできることは何か?変化を加える為にも、笑わせないことにしました。
 
笑顔以外の構成要素を作ること。
もちろん彼女から湧き出る笑顔はとっても素敵で笑顔が伝染して私たちも楽しませてくれました。
サボらない為に、彼女に私から寄り添いに行くために、新たな顔を見つけることにしました。
 
写真は足し算だけじゃなく、引き算もあることに改めて気づかせてくれました。
この写真を撮っておいて、ですが…私は彼女の笑顔が大好きです!

Photo by Lisa
Coordi by Kubo

 

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