
一枚の写真を見てその被写体から何かを感じる時、その被写体は一つの要素だけではなく持ち合わせているもの全てを使い表現をしています。例えば言葉がほとんど通じない人に何かを伝えなければいけない時、大げさな動作をしてみたり、表情を変えてみたり、近くにある物を使ってみたりと正確に伝える為に色々なことをして表現すると思います。それと同じようなものだと思います。写真には光であったり、構図であったりと重要な要素がありますがそれはただ見る人に伝えやすくするための一つの素材であり、根本的な「何か」はその人の体のどこかしらの部分から現れているのだと思います。そしてそれが色々な素材と全て組み合わさった時に一枚の写真を見て何かを感じるのだと思います。
個人的に七五三の写真を撮影することをとても難しく感じます。何故かと言いますと着物を着ることによってある程度の自由が制限される為に、被写体からその根本的な「何か」が現れる確率が少ないからです。成人であればそれを作ることもできますが被写体が子供であるとそれを作ることは容易なことではありません。ですから子供の撮影の場合被写体から自発的に出たものを一瞬で感じ取り撮影をしなければいけないのです。いつ現れるか分からない状況で緊張をしながら見落とさないようにしなければいけません。
この写真を見て個人的ではありますが「らしさ」というものを感じます。
三歳という年齢はある程度区切りがつけられる年齢だと思います。幼児期が過ぎ物心が着き、少しずつではありますが世の中のことが分かり始める年です。自分の目で見て色々なことを知りながら自分で判断し徐々に成長していきます。大人に憧れ大人の真似をしたり、それらしいことを言ったりもしますがでもやはりまだまだ子供なのです。それが三歳くらいの子供であり、またその光景を見ている我々もその姿を自然と感じるのではないでしょうか。
着物を綺麗に着こなし、後方からの光によってとても大人びて見える彼女。ですが右手にはただ握ったという花の持ち方で左指を口元に持っていくあどけない仕草の彼女。少し下を向き照れ笑いをする彼女。「大人」と「子供」が混じりあうこの姿こそが「三歳らしさ」というものであり自然であると思います。一定の自由を失いながらもそれを最大限表現してくれたのではないでしょうか。