
こどもの写真を撮るとき、常に今という時間と、ほんの少しの未来を感じながらファインダーを見つめている。
こどもがどう動くか。
危険から守らなければならないという意味と、どう動いたとしても画の中にバランスを保ち構成できる責任がカメラマンに課せられている。
しかししばしばその予測した未来の外にこどもは飛び出していく。
そこがこどもの写真のおもしろさの一つだと思う。
さて、この一枚はこちらの期待をひとつ飛び越えた瞬間をおさめたものである。
棚の隙間から覗き込むような瞬間を狙っていたのだが、この子は空間との関係性を表し、絵の額のイメージで配置した棚の意味合いを変化させた。
この時、自分の価値観を上回るものに書き換えられたのを感じた。
いつも僕はこどもに教わっている。
凝り固まった固定観念を揉み解し、同じ空間に、同じシチュエーションの中にまだ知らない可能性が秘められていることを知る。
僕の知的好奇心とこどもの無限の可能性のせめぎ合いと調和。
言葉でのコミュニケーションはまだできない年齢のこどもと言葉ではない対話をいつも楽しんでいる。