フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

静的写真

投稿日:2010/4/25

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子供と大人の撮影の大きな違いは、動的写真と静的写真と言い換えることができるかもしれない。 すべてのカットに当てはまるわけではないが、おのずと撮影時の心構えも変わってくる。 動的撮影では「動き」というものが写真の要素で占める割合が大きくなる。 一つ一つのしぐさや偶発的な出来事を取りもらさないように、次にどんなことが起こるかということを常に予測するということに意識を集中する必要があり、瞬発力を発揮する必要性がある。 一方の静的撮影ではその心構えがまた違ってくる。 そういう意味では大人と子供の撮影はまったく異質なものと考えていいだろう。 静的撮影で一番意識を向けるべきは「イメージ」ではないだろうか。 もちろん子供の撮影にイメージが不要ということではない。 だが、静的撮影においてはその占める割合が大きく異なる。 シャッターを切る前に、頭に描くイメージ、それに写真を構成する要素の一つ一つを当てはめていく、時間はたっぷりあるのだ。 光、背景、構図、レンズ、ポーズ・・・・カメラマンにまだ十分な時間が与えられる・・・表情、目の位置、指先の角度、髪の毛の流れ、顔の角度。 こうして、ひとつひとつ絵を描くように作り上げていくのが静的写真の醍醐味だ。 なればこそ、撮影者に求められるのは写真を撮る技術ではなく、イメージを描く発想力だといえる。 それは撮影者自身の経験や知識に基づくものであり、そのイデオロギーや価値基準というものがより多く反映されてくる。 被写体の主観と撮影者の客観、そこから生まれた写真にどれほどの共感が得られるか。 それぞれが重なる部分をより多くできるように撮影者は人間性を深める努力をつねにしなければならない。

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