フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

背景紙

投稿日:2010/5/3

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背景という要素・情報を排除した なにもないシンプルな空間は 主題に集中せざるを得ない。 そのため背景紙での撮影は 主題への減算的アプローチであると言える。 ファッション雑誌にある、背景が単色の写真も 主題(すなわち洋服)への集中という意味で言えば 効果的な使い方である。 また、日常には単色の背景に囲まれる状況はほとんどないため 非日常、異空間の演出という意味合いもあるだろう。 もちろんそれが主題の表現において最適なわけでない。 自然な写真かどうか、で言えばそうではない場合も多く また、合目的で、より多様な対象は、目を、感情を喜ばせるという ある美学の観点から見れば、その単純性は今ひとつ物足りないとも言える。 そのため撮影者には、無背景に意味や必然性をもたせることをはじめ その単純性と複雑性、集中と分散のバランスを意識しなければならない。 マタニティ写真は主題が明確な写真であるため かえってそのバランスをとるのは難しく感じる。 あらかじめ確かなことを確からしさを失わずに その特質を保つには簡単ではないからだ。 この写真を撮影するとき 少しでもその単純性から抜けだそうと試みた。 自分の人生の1つの分岐である妊娠・出産の時期に 自分の内面に、生まれてくる子どもに静かに深く入っていくような様子。 この写真が多様であるわけではないが いくらか目を、感情を喜ばせることには成功したように思う。

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