フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

祈るように願う、ただそれだけ

投稿日:2010/6/26

226 3

横浜店の武器の一つに緑の豊富さというものがある。ただ、季節によって、また天候によって、同じではないからこその、楽しさと難しさがそこにはある。 外での撮影は何よりもその日の天候によって大きく左右されるので、作り込むという点においては、スタジオ内で撮影する場合よりも遥かに難しいと感じる。ただ自分が撮影する角度や人物の配置、レンズ、光の取り入れ方、シャッタースピードの変化等、無数の組み合わせの中で、背景の緑の豊かさや綺麗さをどう表現し、圧倒的な強さを持つ光と緑の中で、そこにいる人物をより明確に印象付けるためにはどうすればいいか、ということを僕は考える。 . まず、背後は若干暗めの緑になるよう人物を配置し、少年の右側の少し空いた空間を、やや明るめの緑色がくるように配列する。こうすることで赤い帽子をかぶった少年がより一層際立ち、同時に背景の緑も明暗が分かれ、より際立った明るさと暗さ、その、色のコントラストを表現できるのではないかと思った。 . ここには様々な種類の木の、様々な形と色をした葉が広がり、日中、太陽の光が当たると、日の光が葉に反射し、更に明暗が分かれる。緑、深緑、黄緑、薄緑…その色は無数に存在する。上の葉が下の葉に影を作り、風に吹かれ木々が揺らぐことで隙間が生まれ、木々の向こう側にある青い空を垣間見ることもできる。作られたものではない大地の力、そして自然のエネルギーに満ちた世界の中で、緑色の葉が、あたたかな光の粒を作り出し、それがイルミネーションのようにキラキラと輝く。 . その緑と光の輝きの中で赤の帽子をかぶった少年がほほえみ、初夏の風が少年の前髪を少し動かした瞬間を僕は切り取る。 . 混沌とした世界の中で、ますます減少していく世界の緑と豊かな海。汚れていく空気に増えていく悲しみ。 だけど、この少年が笑った瞬間、僕は世界がこれからも平和であることを願い、そして、地球という星に生まれ立った僕たちが、いかに自然と共存して生きていくことをこの先もっと重要視しなければいけないのかを、改めて考えさせられた。 . 願えば叶う。 . だから願おうと思った。想いを少年に託して。 世界がこれからも平和であることを、切に願う想いも込めて。 この時代に生きている子どもたちが、大人になった時にも、世界の自然がまだ限りなく残っていることを願い、慈しんで。

この記事をシェアする