フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

2歳の今

投稿日:2010/6/26

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世界で活躍するデザイナー、 吉岡徳仁さんがTV番組で言っていた言葉。                                                「偶然より美しいものはない」 こどものように、何かを探している吉岡さんの姿は     偶然から成る、新しい発見にドキドキしているようだった。                                                     この言葉を聞いた時に思い出した1枚がある。 わたしもこのスタジオで、何かを探しながら撮り続けていた。 その答えが少しだけ見えたように感じた。 いいよ、いいよ、 好きにしていいよ♪ そう言ったそばから君は、まるでちっちゃな子犬が走り回るように、 右に左に、おっとと前に、 ずっとずっと走り続けた。 だってまだ、君もちっちゃな2歳だから。 歩けるようになって、 走れるようになって、 それはもう、走り回ることが楽しくてしょうがないでしょう。 君の表情から、姿から、 その走り回りたい衝動を感じたから、外に連れて行った。 一緒に走ろうと思った。 一緒に走るように、追いかけて撮った。 一瞬一瞬のシャッターチャンスを逃さないように、 ずっとずっと君だけを見ていた。 独特な光の3角形が出来ていたことにも気づいてはいて、 おもしろそうだな、と思ったけれど、 この子にそこへ立ってもらうように誘導するのは、なんだか違うと思った。 私の考えだけで、 そこへ立ってもらったところで、 それは、彼だといえるのか? もう止めないと、言ったから。 いつか、ここを通るかも知れない。 撮れたらラッキーかな、 その程度にしか考えていなかったけれど、 待つ間もなくダダダっと撮影が終わった。 彼は十分楽しんだように見えたから、終わった。 写真をチェックしていると、この1枚があった。 偶然? いつの間にか撮っていた。 瞬間の中で、必死で撮っていたのだろうが、 不安定な露出の中、 激しく動く彼が、 光の中にすっぽりと入っていた。 その姿は、紛れもなく、彼だった。 動きからなる指先、興味を抱く方角へと向いた顔、 ダンスをしているようなポーズから、 彼の心躍る気持ちがあふれているようだった。                             ただ、嬉しかった。                                                    400分の1秒で閉じ込めた、彼の世界。 探しているのは、本物の「あなた」です^^ ************************************************ 追記 親御さんからよく聞く言葉の中に、 可愛いわが子の姿を残したくても、 よく動くので、普段ブレて撮れないんですと聞きます。 スタジオで撮影した写真を見ながら、 よくブレていませんね、とも言われます。 しかし、実際のところ… ブレます! というのも、スタジオ内で照明(蛍光灯)を使用し撮影する場合、 シャッタースピードを100分の1以上速くしてしまうと、 蛍光灯のフリッカー(発光する際のチラつき)が発光していない瞬間と シャッターがおりる瞬間がシンクロしてしまい、 暗い写真となってしまうことがあるのです。 それでは、いい写真もダメになってしまうことがあります。 なので、基本的に照明を使用する際は、 シャッタースピードは100分の1以下です。 走ればブレる、それくらいのスピードです。 その状況下の中で、撮影をするということは、 少なからず、どこかで、あまり動かないようにと願ってしまう部分があるかも知れません。 被写体に対して条件を出してしまうことだってあるかも知れません。 それを楽しみながら、基本的にはやりたいと思っているのですが、 彼の場合、 そんな条件の中、動きを多少制限してしまった部分があったので、 その分思いっきり動いてもらおうと考えたのでした。 思いっきり動くには… 自然光撮影しかありません。 人口の照明よりも、もっともっと明るい太陽には、 ちらつきなどなく、 さらに露出もあがる(明るくなる)のでシャッタスピードを速められます。 その特徴を活かし、 彼を自由にしました。 彼から、何が生まれるのだろうと、 わたしもドキドキ。 自分ではない世界から受け取るものがたくさんあります。 自分の世界の中に、被写体を連れてくるのではなく、 相手の世界にちょっとだけおじゃましながら、一緒に時間を閉じ込めていきたい、 そう思っています。 わが子がブレてしょうがない、というパパさんママさん、 お天気のいい日はぜひ、カメラ片手に、 太陽の下で思いっきり遊んでみてはいかがでしょうか?

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