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赤の良く似合う子だった
彼女が選んだ赤いサロペット。彼女が望んだ赤いバス。
自然光がキレイに降り注ぐその部屋で、彼女がちょこんと座ったのは
やっぱり赤いマットの上だった。
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すべて、彼女が選んだもの。それでいいのだ。
だってその瞬間、彼女の見たくない物はその場から消えていき、
この世界で彼女の見たい物だけがすっきりと見える様になっていく。
その瞬間の子供の一瞬の表情や、思考というのは本当に魅力的だ。
ファインダー越しに見ると、それが本当に明白に分かる。
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いま、彼女は自分で物語を作り出している途中。
私はその時間を大切に大切にしてあげたいと思った。
無理に笑わなくていい、無理にポーズをとらなくていい。
ただ、彼女の感情の赴くままに、物語を紡いで欲しかった。
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そうやって彼女自身が持つ大いなる魅力を考えたら、
私たちカメラマンに出来ることなんて本当に微々たるものなのかもしれない。
それは、「一冊の写真集を作るような気持ち」で撮影に挑むということ。
それは決して、ただ表情を切り取って写真を並べていくという作業ではなく、その時間帯の光や、わずかな風、天候、バスやマットやコーディネート・・・それら全てを考慮した上での表現方法である。
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———ある瞬間、私の心が「あっ」と動いたのが分かった。
そこに写る人物の表情やキャラクターがよりくっきりと見えてくるあの“瞬間”だ。
その感情の赴くままにシャッターを切る。
こうして写真にすることで、その“瞬間”を、伝えたいことを、
いつもより少しだけ分かりやすくすることが出来るのだ。
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あとは、ゆっくりゆっくりと彼女が紡ぐその物語を、その表情を、
暖かく見守り、こうして残してあげるということだけ。
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赤色をこんなにも愛おしく感じたのは、初めてだった。
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