
ある本の中で、少年が、油を注いだスプーンを片手に持ち、それをこぼさないように宮殿を一周してきなさいと言われた。
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少年は一滴もこぼさずに戻ってきた。
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一周するあいだに、宮殿の中にあった素晴らしい宝石やじゅうたんを見たか?と聞かれたら、油をこぼさないように必死で、それどころではなかったと。
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もう一度同じ条件で、宮殿の美しさを見てきなさいと言われた。
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そして戻ってきた時には、スプーンの油はどこかでこぼれてなくなってしまっていた。
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大事なのは、宮殿の中の美しさを全て味わい、しかも、スプーンの油のことも忘れないことだ
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写真に黄金比というものは存在するし、安定感のあるバランスというのも存在する。
シャッターを切る時にそれを意識し、様々な要素でバランスを計算しなければいけないが、
バランスがいいだけの写真を撮りたいのではないという事。
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同じ景色でも人によって見え方が違っているべきだ。
その自分だけの感覚,スプーンの油を、忘れないように。
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七五三の写真は、特に
着物を着て、きちんと姿勢を取って…誰でも思い浮かぶ固定されたイメージがあるけれども、
それまで「まおちゃん」を撮っていたのに、
着物を着た瞬間から「七五三のしゃしん」を、撮るべきではなかった。
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撮った写真の中に、まおちゃんを、そして私を見つけられるだろうか?