
楽しくなると人は動く。
体が。
そして、当然のように、心も動く。
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特に子どもの場合その表現方法は多彩で、動いたり、笑ったり、歌ったり、転げ回ったりする。そういう感情の起伏の波が、個人的に僕はすごく好きだ。そして、そういうのをかわいいなと感じる。だけど、かわいい瞬間を撮る事だけがカメラマンの役割ではないことも学んできた。
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兄弟写真の撮影のとき、その関係性をどう表現するかで頭を巡らせる。ポージングも年齢によってできることは違ってくるので、試験的にいくつかの事を試し試し行ってみる。うまくいくこともあれば、そうならないときもある。
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この姉弟の場合、まずは背中合わせに立ってもらい、単純にその身長差を表現しようと思っていた。
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二人が大きくなったときに、
あの頃はさ、オレ、姉貴の肩ぐらいまでしか身長
なかったけど、いつの間にかオレの方がデカくなったよな、といった類の、未来の会話を僕は想像する。
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だけど僕の目の前にいる弟くんは、周りにあったバスの置き物のおもちゃに気がいってしまっていたため、フラフラフラ~とどこかへ行ってしまいそうな予感もした。そこへすかさずアシスタントが、背中を合わせたままお姉ちゃんと手を繋いでみようっか、と声をかけてくれる。
お姉ちゃんと手を繋ぎ、ふーんといった感じで足をブラブラさせる弟くん。
だけど、ブラブラさせていることが楽しそう。
その動きは次第に勢いを増す。今度は、床についたもう片方の足と、お姉ちゃんの背中に重心を移動させて、バランスをとることの方に楽しさを覚えてきた様子が見て取れた。
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お姉ちゃんは弟くんの体重の半分の重さを背中に感じていながらも、写真を撮られることに対して誠実な、凛とした姿で笑顔を向けてくれる。せめてわたしだけはしっかりしなくっちゃという責任感のようなものも感じられたし、女性としてキレイに写りたいというまっすぐな願いも感じられた。
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弟くんはもはや、おねえちゃんに体重を預けていることも、バスのおもちゃのこともすっかり忘れて、足を上げてバランスと保つことだけに集中していた。それを僕たちも、上手だねー、すごいねーと応援するから、ますますうれしそうな表情をする。
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お姉ちゃんの手を無意識に繋ぎ、ただただ心と体を踊らせて今を楽しんでいるのが伝わってきた。
止まっているのに、すごく楽しそうだった。
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キレイに撮るのではなく、幸せを残す。
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大人になるにつれ、姉弟で手を繋ぐことも少なくなってくると思うが、シンプルな背景に、シンプルなコーディネートのおかげで、より、支えたり支えられたりする、二人の今の関係性がスマートに、シンプルに示されたのではないか。