
わたしにとって、彼女は憧れと言える存在だった。
夫婦写真を撮影しに来た彼女の気合いは、撮影前から感じられた。
「一生に一度だから!」
と、その言葉にどれほどの思いが込められていたのかは計り知れないけれど、
ルンルンと無邪気に支度を進める奥様である彼女と、
写真嫌いで落ち着かない様子の旦那様、
今のふたりと、そしてふたりが出会ってから今日までの大切な時間を想像しながら撮影に臨んだ。
手をつないでみたり、みつめてみたり、
どんな時も彼女は恋をしている。
年下であるわたしから見ても、その姿は可愛らしかった。
この女性を、今の彼女の姿を撮りたい、素直にそう感じた。
彼女を崩さず、不自然にだけはならないように指示は最小限に、
視線の先には旦那様にいてもらい、話をしていてもらった。
わたし達が仲介せずとも、彼女独自の切り口で、話が弾む。
そんな夫婦だけの優しい空気の中に、
新しい風がやってくる。
彼女の長い髪が揺れ、
そして彼女はいつものように、髪を押さえる。
その仕草、
わたしはやったことがない。
(髪が短いので…)
その姿に、憧れと美しさを感じ、彼女を写した。
写真には可愛らしさとはまたひと味違った、
女性としての凛々しさが表れたように思う。
好きな人へのまなざしと、素直な心、
そして彼女ならではの存在感に、心惹かれた。