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代弁者

投稿日:2010/8/29

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写真からわかるように、彼はひどく泣いている。 泣いているというよりは「泣き崩れている」という表現が正しいかもしれない。 何かがどうしようもなく嫌で泣き崩れているのだ。 眠いのかもしれないし、 おなかがすいてるのかもしれないし、 カメラが嫌かもしれないし、 インテリアが嫌かもしれないし、 雰囲気が嫌かもしれない。 もちろん何が原因か分かろうとしましたし、機嫌が良くなる様に努力もした。 しかしはっきりいって何が嫌かわからない。 ただはっきりしていることは、彼はここには居たくない、という事。 そして私は写真を通して彼の代弁者になる。 「ここには居たくない」という代弁を。 彼は、頭に鉄のかたまりが入っているかのような重みで、ずしんと床に沈んでいる。 頭から下に落ちる空間は、嫌悪とか絶望とか孤独とかその類いの沈殿物がドロドロと落ちて溜まっている。 そして彼の側にある木でできたおもちゃ。 泣き止んでくれという希望が詰まったおもちゃ。 しかし彼にとっては何も意味も持たないし、何の救いにもならなかった。 自分たちが思っているほど人は単純ではないし、人が何を考えているのかなんて分らない。 本当にすべてを分かり合える人などいるのだろうか。 私はいないと思うが、分かろうとしようとしないのは止めておこうと思う。

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