フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

光を掴む

投稿日:2010/8/31

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. . 「子供は親の背中をみて育つ」という言葉があるが、私は子供たちの背中をみて学ばされることがとても多い。 スタジオに入った瞬間、非日常を感じ取り「わぁー!」と好奇心を背中で叫ぶ子もいれば、急に知らない所に来て不安になり、その小さな背中をもっと小さくする子もいる。私は後者よりもっと強い、不安というより警戒心をむき出しにする様な子供だったから、この写真の男の子のような好奇心の塊を初対面の私に率直にぶつけてくれる子と出会うと、圧倒されてしまい、どんどんその子のリズムでシャッターを切る感覚を覚える。 . そんなリズムで彼の目線にたって撮影を進めていくと、いつも見慣れているはずの風景が新鮮な世界に見えて来た。「これは何?なんでここにあるの?」 「あそこにあるあの車には誰がのっているの?」彼の好奇心は尽きることがない。目にしたもの、触るものすべてが新発見であり、驚きである。ならば私は出来る限り、その好奇心にきちんと応え、その彼の世界に深さと奥行きを出すことに力を貸したいと思う。 . 「なんでここで写真撮ってんの?」彼が聞く。 「今ね、すっごい奇麗な光が差してるからだよ」と私が答える。 「なにが奇麗なの?なんで奇麗なの?」彼が聞いて、私はその強すぎる光にピントと露出を合わせるのに必死になって黙ってしまった。 その一瞬の沈黙に飽きてしまった彼がファインダー画面上から消えようとしてるのを察知した私は、「見てごらん!」と外を指差す。 「わぁ」と窓に張り付き、黙って外を見つめる彼の背中から、「奇麗だね」と聞こえた。その光は、本当に奇麗だった。 . . .

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