
最初からかなり緊張していた。
誰がどれだけ声をかけても、彼の心はなかなか溶けなかった。
緊張を溶こうとパパとママ、2歳の弟、
家族みんなが集まって、賑やかな雰囲気を作ってみるものの、
彼だけは一向に強張ったままでいた。
カメラを向けても向けていなくても、カメラマンがその場を離れても、
彼は心を閉ざしたままだった。
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まずは家族写真を撮ってみる。
だけど彼の気持ちは変わらない。
いくつか形を変えて撮ってみるが、そうしている間にもただただ時間だけが過ぎていく…。
人数を減らし、最終的には僕と彼1対1になってみる。
賑やかにではなく彼のペースに合わせ静かに撮影をする。
幼稚園の話。好きなおもちゃの話。友達の話。
それまで無口だった彼が、少しずつ僕の質問に答えてくれるようになる。
いいぞいいぞ、と僕は心を躍らせる。
だが、突然、本当に突然、彼はダムが決壊するように泣いた。
さめざめと泣くとはこの事だろうと思った。
目に涙を溜め、声を殺して泣いた。
ママを呼び、再び2人の空間を作る。
椅子に腰をおろし、ママが優しく彼に微笑みかけた。
頑張ったねとか、そういった労いの言葉をかけたのだろうか。
その微笑みに安心したのか、ママの声に安心したのか、その時少しだけ彼が笑顔を見せた。
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母は強し。
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そのとき僕は、心からそう思った。