フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

涙する、我が子を支える、母の声

投稿日:2010/9/20

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最初からかなり緊張していた。 誰がどれだけ声をかけても、彼の心はなかなか溶けなかった。 緊張を溶こうとパパとママ、2歳の弟、 家族みんなが集まって、賑やかな雰囲気を作ってみるものの、 彼だけは一向に強張ったままでいた。 カメラを向けても向けていなくても、カメラマンがその場を離れても、 彼は心を閉ざしたままだった。 . まずは家族写真を撮ってみる。 だけど彼の気持ちは変わらない。 いくつか形を変えて撮ってみるが、そうしている間にもただただ時間だけが過ぎていく…。 人数を減らし、最終的には僕と彼1対1になってみる。 賑やかにではなく彼のペースに合わせ静かに撮影をする。 幼稚園の話。好きなおもちゃの話。友達の話。 それまで無口だった彼が、少しずつ僕の質問に答えてくれるようになる。 いいぞいいぞ、と僕は心を躍らせる。 だが、突然、本当に突然、彼はダムが決壊するように泣いた。 さめざめと泣くとはこの事だろうと思った。 目に涙を溜め、声を殺して泣いた。 ママを呼び、再び2人の空間を作る。 椅子に腰をおろし、ママが優しく彼に微笑みかけた。 頑張ったねとか、そういった労いの言葉をかけたのだろうか。 その微笑みに安心したのか、ママの声に安心したのか、その時少しだけ彼が笑顔を見せた。 . 母は強し。 . そのとき僕は、心からそう思った。

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