
.
.
ヘッドフォンを付けて光に包まれる君を見て、
私は思わずシャッターを切る。
何が聴こえるの?
何の曲を口ずさんでいるの?
.
体をくねらせ楽しそうにリズムに乗る彼とは対照的に
ヘッドフォンのコードはタラリと床に落ち、
その先は何にも繋がってはいなかった。
.
でもあのとき、確かに君の耳には何かの曲が届いていた。
そして私にもきっと、その曲を聴いた懐かしい日々があった。
.
.
.
被写体を右下に入れたのは、
もちろん彼が聴いている曲を想像させるための意図もあるけれど、
あのとき、ファインダー越しに確かに見えたのは、
彼が口ずさむリズムだった。
.
懐かしいあの曲を、私も久しぶりに少しだけ聴けた気がした。
.
.
.