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「輪郭」に焦点を絞った撮影だった。
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私はその美しい輪郭を描いたお腹のカーブを際立たせようと、引き算の写真を撮ろうと思った。
まずカラーを排除し、その被写体を形成している目や鼻や口を写さない。
すなわちシルエットでの撮影だ。
私は「シルエットだけなんで、顔はリラックスしていていいですよ」と声をかける。
その瞬間、二人は自然と笑顔になって、小さな声でニコニコと何か話し出すのも分かった。
その二人の笑顔が本当に幸せそうだったから、私は行き着いたはずの引き算の答えに、笑顔という要素を足すことにする。
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この写真には被写体が笑顔であるということが分かるように、純粋なシルエットだけでなく、ある程度の輪郭が必要だった。
バックから当てた照明で、被写体のシルエットにグラデーションの微々たる輪郭が、どの程度出るのだろう。試行錯誤した。
シャッタースピードと露出とISO感度を、徐々に徐々に調整していく。
普段、コンディションが重要な子供ばかりを被写体にしている私にとって、その調整時間というのはとても新鮮で貴重な時間だった。その中で被写体が一番魅力的に見える数値を導き出す。
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二人が幸せそうに微笑んでいることも、父親になる彼が彼女を包み込んでいることも、顔と左腕に微かに見える輪郭で了解することが出来る。
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