
ここも横浜店にできた新しい空間のひとつです。
以前からあったこの1階の窓辺には格子状の木枠が取り付けられ、全体がイエロー系のトーンでまとめられています。ヨーロッパかどこかのひっそりとした路地裏の古びた家のような、古いお城の誰も使っていないひっそりとした一室を思わせるような、音のない静かな印象を与えられます。
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彼女の黄色いヘアーアクセサリーを見たときに、私は彼女をここに連れてこようと思いました。
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彼女にはひっそりとしたお姫様のイメージを持ったのです。彼女は私に抱えられてこの窓辺に座り、自ら膝を抱え静かに座り続けました。
私が外を見るようにと促すと、彼女はその姿勢のまま綺麗に顔だけを動かし静かに外を見つめ始めたのです。
アニメ、「ルパン三世 カリオストルの城」の作中でクラリス姫が確かこんな風に窓辺に座って祈るようにルパンの助けを待っていたのを思い出しました。
外からの日差しと、豪華にまとめられた髪飾り、そして窓の外を見つめる少女のたおやかさがとても印象的な時間でした。
祈るような視線を送り続ける彼女は、何を見ていたのでしょうか。
希望を待ち続けるような、落ちていく花びらを見つめ続けるような、雲の向こうに消えていく渡り鳥を見送るような、優しくも強い思いを私はイメージしました。
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写真を撮る上で、彼女の目線をもっと上に意識させるか、逆に下に意識させるかでこの写真の印象は大きく変わると思いました。ですが私は誰かの小さな営みの時間を壊してしまわないように注意するとき、たいてい身を少しかがめる癖があるようです。相手からは確実に見えているのですが、すこしでも邪魔にならないよう身をかがめるのです。忍者のように静かに。そっと、こちらも祈るような願いを込めて。
この時もすこし身をかがめ、下から彼女を見上げました。彼女も少し上を見つめたまま、何かを考えているようでした。
彼女がこの時間を幸せに過ごしていたかどうかはわかりません。
わかりませんが、私は「視線を上に」とか「下に」等とどうこう騒ぐよりも、彼女が見つめるその先に何があるのだろうかということに思いを馳せることに必死で、気付けばそのままの彼女を黙々と撮り続けていました。