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循環で訪れたスタジオにも慣れてくると、いつか撮ってみたい構図というものをいくつか用意しておくようになります。しかし、カメラマンとしての欲ばかりが先行してしまうと、バランスが崩れることを忘れてはならない。撮影というのは、総じて繊細なものだ。時間、天気、被写体の年齢やコンディション、時間的精神的余裕。それら全ての条件がマッチした時こそ、それを試してみる瞬間なんだと思っています。
準備をしていると、チャンスが来た時にそれを逃がすことがない。チャンスをチャンスと捉えられるかどうかは自分の準備次第。それはカメラを構える上での、決定的瞬間を逃がさない目を養うことに非常によく似ていると思う。
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私が挑戦したかった構図がこの写真であり、下記が準備事項であった。
■1.構図の決定
まず一枚の画の中で、ポイントとなる被写体の顔部分を右上の黄金分割点に配置し、被写体の中心線を画面を3等分した右側のラインに乗せ、安定した構図を決定する。
■2.被写体に当てる光の量を決める
国分寺のスタジオは時間帯により光の入り方が極端に違う。肌に綺麗な光のグラデーションが出るように、入射方向に対しての被写体の向きを微妙にズラしていく。
■3.被写体の位置と余白
この被写体は1メートルくらいある高い椅子に座っている。このカット以外は床に立ち撮影をすることがほとんどだったので、地に足が着いていないこの写真には不安定さがある。
また、被写体の顔の向きとは逆の背後に余白を作ることにより、着飾った女の子の希望に満ち溢れた前向きのイメージを今回は払拭したかった。加えて、光が乱反射した明るいホワイトルームから1歩出た位置に被写体を固定することで、被写体のトーンを暗くし、その存在感を浮き出すのが狙いである。
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以上3点に集中し、微々たる調整はその都度していく。それが許されるとても贅沢な時間だった。全ての条件を満たした、希少なチャンス。それを掴んだ瞬間は、自分の中で湧き出る感情がある。これからも、心に余裕を持ちながら、そのチャンスを虎視眈々と狙っていたい。
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