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75枚の原本の中にはいろんな事実が写っている。
彼女の場合はこうだった。
ママとパパを見て笑う彼女を、最初は自分の存在を隠して撮影していた事実。
やっと彼女の視界に入れたと思ったら、やっぱり懐疑的な目を向けられてしまった事実。
彼女の世界に急いで入ることをやめた事実。
それが、彼女のリズムだった。
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日の当たるホワイトルームで静かに踊る。
いつもは七五三などで使っている布を手前に入れたのは
幻想的な雰囲気にするために色味を足したかったのと、
右から流れるリズムを表現したかったから。
そして、75カットの写真を並べて見た際の、他カットとの変化をつけるためであった。
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原本を見ていると彼女のリズムと優しいダンスを思い出す。
最後のシーンでは、私に向けてくれる彼女の目線がまるで恋人を見るみたいに変わった。
ファインダー越しに見る世界の変化は肉眼よりもそれは顕著で、
私のことを好きになってくれたんだって、ただそれだけが嬉しかった。
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