
二つの人形を抱きかかえ楽しそうにおどける少年。賑やかでいいじゃないか、と僕は思う。たった1時間の撮影の中で、人が人に心を許し、こんなにも笑ってくれる。それもスタジオというちょっとした異空間の中で。
こんなにも自然に笑ってくれるっていうのは、僕にとって本当に何よりも一番うれしいことです。
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撮影は楽しくなきゃいけない。子どもも親も、カメラマンもアシスタントも、みんなが楽しめる空間でありたい。来てくれる人に楽しんでもらうだけじゃ満足ができない。自分たちも楽しみたい。そしてその楽しさをみんなで共有したい。そうじゃないときはどうしてもあるけど。やっぱりそうありたいと強く願うのです。
この写真はそういう楽しい雰囲気作りが土台としてあるからこそ生まれた一枚です。
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彼が「かわいい!友だちになりたい」と連れ回した人形たちの愛くるしいとぼけた表情に挟まれて、一段とくっきり彼の笑顔がはじけ、僕は「楽しんでていいな」と思いましたし、僕も「楽しかったな~」と、今でもあの時の空気を思い出すのです。撮影の後もその楽しい「熱」みたいなものは残っていて、「楽しかったな~。また来てほしいなぁ~」という想いで手を振って見送り、その手を振った感覚を、記憶を、巡らせながら、また僕は楽しい気分になるのです。
そういう想いというものは、消えてしまったり薄れてしまうものかもしれないけど、でも、そういうものを大切に抱えながら、僕はこれからも写真を撮っていきたいと思うのです。