
大切にしていこうと思うものがある。人は誰しもそういう決意や想いみたいなものを抱えている。そして私の場合、それが私の写真を撮る基準になるし、私が外に向けて写真を公開していく基準になるのです。
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全てのお客様に平等に、親切に、気持ちを込めて向き合おうとしても、私たちも人間だから、その時の心情が接客にも写真にも現れてしまう。いい意味でも悪い意味でもそこに形として残るし、どちらの場合ももっとこうすればよかった、もうちょっとこうしておけばよかったなと少し反省し次に活かそうと思います。でもそんな風に素直に自分に向き合える日はささやかだけれど自分を褒めてあげようとも思うのです。
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撮影が始まって子どもの動きを観察しながら、自分の中でポンポンポンとひらめきが冴えわたるときは、こうしてみよう、ああしてみようとイメージが膨らみ、ワクワクするしドキドキしたりします。私のひらめきなんてたいしたことはないのだけれど、自分の中で湧き上がる感情を感じたとき「あぁ、こういう気持ちを忘れちゃいけないな」と強く思うのです。
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Kidsの撮影で私が最も重要視しているのは、「その子がその子らしく過ごせているか?」という点です。初対面の私たちがそれを見極めることは難しい点ではあります。パパやママでさえも、成長し続ける我が子の外の世界での本当の姿というものを理解することは容易ではありません。5歳という年齢は思考、理解、判断、推理、想像など内言語がよく発達する時期で、それらを適切な話言葉(外言語)で自己表現できるようになります。すなわち、創造的な活動を自分ひとりや仲間たちと行うことができるようになります。5歳児は就学前期の子どもですが、自分の世界を拡大し、社会的にも自分の存在を確かめていこうとする心身の働きが飛躍的に発達する時期で、子どもから大人へと成長していく上で、その土台がしっかりと固まる大変重要な時期です。
そんな彼に自分で考えて行動させるというということを今回のポイントとして与えます。
座る場所は私が指示を出しましたが座り方やアイテムの持ち方は彼本人の行動に任せます。足を組むもよし、伸ばすもよし、横向きに座るもよし、道具を使うもよし、道具を置くもよし、という感じで、彼の行動に私が合わせます。
そういうことを本人に伝えることで、彼には自尊心が芽生えてくると感じました。彼の意思を尊重する、彼の行動に制限をかけない。そういった範囲をこちらがきちんと提示し、環境を整えてあげることが必要です。
私は写真の技術はまだまだですが、私の今までの経験上、こうした小さな気遣いや配慮をきちんと与えてあげることで、私は彼から信頼を得ることが出来るし、お互い気持ちの良い撮影を行えるのです。
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環境を整えたところで私は棚の下に入り込み、楽しく過ごす彼を覗くように撮影していました。被写体の前に棚やカメラなど黒っぽいものを配置し、明暗をはっきりさせたかったのです。仕上がった本来の写真はもう少し木のぬくもりが伝わる茶色っぽいイメージでしたが、彼の表情や姿勢、指先、足の裏など、人物により目が向けられるように、人物以外の場所にシアンとマゼンタのフィルターを少し加えました。
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