
.
私がそう言うと、後ろから優しく抱きしめたお母さんだった。
撮影が始まる前から、私はこの親子を見ていた。家族の自然な関係性を事前に見ておきたくて、そうすることにしている。
その小さな時間が家族写真を撮るときの参考に繋がったりするものだ。だから自分から積極的に子供に近づくときもあるし、なるべく目立たないようにして見てるときもある。この親子の場合は間違いなく後者だった。
撮影前、鏡の前に立つこの子の後ろにお母さんが来て、ゆっくりと髪をといてあげている姿を鮮明に覚えている。
なぜなら、それが美しく、神秘的な存在にさえ思えたからだった。
私が母が娘の髪をといている姿というのに、過剰に反応してしまうのは三姉妹の末っ子の自分自身にはそういう記憶があまり無いためなのかも知れないという話は今は置いといて、
なるほど。この親子の写真に自分の存在を写したくないなとだけ思う。
そんなことを考えながら撮影していた。
.
.