
その子は突然寝たふりをしました。
春だからなのか、
日差しが気持ちよかったからなのか、
照れてしまったからなのか、
それはわかりません。
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寝たふりをしたまま舌を出し、
へへへっと笑って、
それでも彼は目をつぶり寝たふりを決め込みました。
僕はどこかのドッキリ番組のレポーターのように、
「お・は・よ・う・ご・ざ・い・ま~す」
と小声で話しかけ、
彼を眠りの中から連れ出しました。
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また「へへへッ」と笑った彼には、
笑った時にだけ見せるえくぼがあって、
伸びをしようとする腕も、
降り注ぐ光も、
過ぎゆく春の昼下がりの中でキラキラと輝いていたのです。
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春だからね。
日差しが気持ちよかったんだね。
ただただ照れてしまっただけだよね。
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たまにはこんな風に、
昼ご飯を食べた後の、眠たくなるようなのんびりした気持ちで、
春の日の午後を過ごすのも悪くはないですね。
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桜の花びらが秒速5センチメートルの速度で散っていき、今は窓の外に緑色の葉がサラサラと揺れている横浜店。
静かに、優しく、
季節は春から初夏へと移っていきます。
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リラックスして、
その子がその子でいられる空間を僕たちが作ること、
それは簡単なようで簡単ではありません。
このくらいの年齢の子はリラックスしすぎてしまうと、
逆にとりとめのない状態になってしまうこともあるからです。
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ほどよい緊張感とリラックス。
そのバランスを取りながら、
我々は子どもたちの動きや仕草を見極めていかなければいけません。
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季節が巡る中で、
5月は新しいクラスや新しい担任の先生、
新しい友だちや新しい生活に少しずつ慣れてきて、
子どもたちがまた一段とうかれ、はしゃぐ季節でもあります。
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そんな季節の移り変わりに残した昼寝から目覚めた少年を見ていて、
なんだか心がすごくポカポカしました。