
彼女に会うのは何度目だろうか。
一番最初にあったのは七五三の撮影だった。
大抵の子供は着物を着たらお姫様気分になりうっとりして落ち着いていたり、
動きに自由が利かなくて泣いたりするかどちらかだと思っていた。
どちらにしても緊張はするだろう。
だが、彼女には関係なかった。
人間ホッピングのようにピョンピョン飛び跳ねたり、走り回ったり、目についたおもちゃがあればそんなの関係なしに遊び始める始末だった。
その時私はlifestudioに入って半年ぐらいだったが、今考えても着物であんなに恐ろしいスピードで動く子供がいるのか。と驚いたことを覚えている。
ドレスになると動きは2倍になりヒラヒラというスカートがバッサバッサと音を
立てて目の前を過ぎ去っていく。
2度目に会ったときは耳を舐められそうになったし、3度目に会ったときは高い高いを10回以上させられた。
そして4度目は野外撮影。
正直私は怖かった。。。
彼女は大地が続く限り無限に走り続けるだろうと思ったからだ。
良い写真が撮影できるかどうかも不安だったが、今回彼女の父親HONUさんも一緒に撮影をすることで楽しみでもあった。
だが父親はアルミホイルと白い紙で手作り感満載のレフ板を用意し、「85一本でいきます!」とプレッシャーをかけられ1トンの重りがズシンと肩に乗っかった気分だった。
私たちlifestudio水戸店がサラリーマンに負けるわけにはいかなかった。
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そして私はこの1枚の写真を選んだ。
この日曇り空だった太陽光(メインライト)は真上から地面に向かって垂直に差し込んでいた。
露出は陰ではなく光が当たっている場所に合わせると、肩に落ちた光が彼女にくっきりとした輪郭を与え浮かびあがらせる。
そして、どう指示をしたか覚えてはいないが、顔を上に向かせ指を差すような感じにして背景の木と同化させ写真の方向を調和させもっと彼女の存在を強調させる。
写真には「方向」というのがあり「方向」を意識して撮影をしなければならないと私は思っている。
うまくは言えないが「方向」というのは写真の意識がどの方向に向かっているかということで、四角に対して上下左右、前後どの方向に力が加わっているかということ。だと思う.......
構図に関しては、被写体が空を見ている場合、私は上に余裕をもたせて余白をあけ、被写体の目線を強調させ「方向」を合わせるのだが、この写真は下に余白をあけ光をたくさん含む緑の草むらを写した方が、うっそうとしている木を写すよりも良いと思ったし、明るい光の中に黒ドレスの彼女を入れた方がシルエットのようになり彼女に惹かれるだろうと思ったから。
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この写真を選んだ理由は、光、色、構図、調和、方向といろいろあるが、決定的な理由はYUWAらしかったという理由に尽きる。
YUWAは警備員に声をかけたり、知らないおじさんにだっこを求めたり、寝転んでいる前田の両足を持ってパカーッと開脚したりして、YUWAは誰に対しても同じ態度を示す。
初めての場所も怖がらないし、人見知りも絶対しないし、差別、偏見も大人になっても絶対に持たないだろう。
YUWAはすべてを受け入れる心を持っているし、だからこそすべてを受け入れてくれるのだと思って純粋に人を愛する。
環境が変わっても中身が全く変わらないYUWAがうらやましいぐらいに輝いているこの写真が私は好きだ。