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「いったい何人の人が私の吹いたシャボン玉に気づくんだろう」
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小さいころ。
家の屋上からシャボン玉をふいては、そう思っていたのを覚えている。
でも、たいていの大人は、空を見上げてくれない。
だから結局誰も気づいてくれなくて
途方に暮れてまた別の遊びを探しにいくのが常であった。
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不意に、スタジオに来た子供たちにあの頃の自分を重ねる瞬間がある。
大人たちが話を進める傍ら、ママにパパにそして私に何かを求める子供たち。
でも難しい会話に自分が参加できるわけもなく、ただ流れるように進められるそれを大人の時間と了解して諦める。
少し寂しい。
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だから、
「見てるよ」って言いたかった。「大丈夫だよ」って言いたかった。
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撮影前の打合わせの時間。
誰も自分の相手をしてくれないと少しつまらなそうにして、ベッドの下を覗き込んだ彼女。
何かあると思った? 誰も見ていないと思った?
大丈夫、ちゃんと見ているから。
泣かなくても、大丈夫。
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