
彼女はこの写真の後、スタジオのドアを一人で開けスタジオを裸足で飛び出していった。
私もアシスタントも、パパもママもみんなで必死に追いかけた。
撮影中の彼女の視線の先は、ドアの外を見ていて、いつ逃走しようかをうかがっていたが、みんな阻止するのに必死だった。
スタジオが嫌というよりかは、ただ外でも遊びたいということなのだろう。
そのような状況の中での、彼女の心情を捉えた瞬間的な写真である。
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被写体の背景にあるのはさっきまで遊んでいた小物があり、雑然としていて彼女の興味を失ってしまったモノ達である。
トランクやカゴ、電話機、本、 これらのものを写すかどうか一瞬悩んだが、この雑然さが良いのだと思い背景に選んだ。
彼女が興味があるのは、おもちゃではない。ドアの外だ。ということが言いたかったからだ。
そして前ボケで被写体の半分を隠したのは、いつ外に出ようかとドアを見ている彼女の視線を強調する役割は果たしている。
子供の撮影をしていると、瞬間的な偶然(チャンス)がよくある。
そしてカメラマンにとって何がチャンスなのか、何が良い瞬間なのかは人によって異なる。
本当に良い瞬間とはなんだろうか?