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ふと、日常から抜け出し別のスタジオで撮影した際に集中力が溢れ出す瞬間がある。それは、自らの経験が作り上げるスタジオ内の光への理解や、フレーミング、子供のコンディションなど。写真を形成する要素を一旦全て取っ払った瞬間でもある。ただただ、被写体に集中するのだ。
7月、1日だけ自由ヶ丘で撮影をする日がありました。といっても、過去に何回も自由ヶ丘で撮影をしたことはあるので、上記のポイントは少なからず自分の頭の中にはありました。ただ、その1日をどのように使うか。それが私の中での挑戦だった。今まで撮ったことの無い場所で、撮ったことのない光で、撮ったことのないポーズで・・・。とにかく、過去に自分が積み立ててきた自由ヶ丘での知識を取り払いたかった。私は写真に集中がしたかったのだ。
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私はこの日、光のことを考えていました。
4時過ぎの西から照る光は、私の経験通り、自由ヶ丘の大きなガラス窓から入り込み、オレンジ色を帯びて広いスタジオ全体を包み込みました。過去よくそのまま使用していたその光。私はそれからの脱却を図るため、印象の強い西日から少年を逃がし、彼と光を厚い壁で遮りました。
光は向かいの壁に当たり、反射し、少年の影を柔らかく緑の壁に落としました。今までそのまま使用していた光が反射を利用することで、回り込むことでこんなにも表情を変えてきました。
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あの時間、あの場所に濃い影と共に落ちる夏特有のあの強い光。
それはとても魅力的で、印象深くて、強くて綺麗だけど、
すべてのカメラマンに無条件に与えられたそれを、自分で操れるようになりたいと思った。
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