フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
躍動3
投稿日:2011/10/29
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躍動感1〜2の既出の条件で広角レンズを使わずに躍動感のある写真を撮影しようとしていた。
すると、50mm、85mm、100mといったように、標準、中望遠~望遠・・によって、躍動感の違いが生まれていった。
もちろん、被写体の性格や光、私と被写体との関係性等、写真を形成する要素によってもそうなのだろうけれど、
レンズによって表現されるそのリズムの違いを、「躍動感」という枠の中で今月は楽しむことが出来た。
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100mmで撮影したこの写真。
撮影をする前、被写体にも撮影者である私自身にも、とてもゆるやかなリズムが流れていた。
BGMはハイロウズだったけれど、私と彼女の間には確かにゆるやかな、あたたかいリズムが流れていた。
数日前、「誕生日に何がほしい?」と彼女が私に聞いた。
私は「癒されたい」と言った。
「何をしたら未来ちゃんは癒されるの?」その質問に私は
「 写真が 撮りたい 」とだけ答えた。
だから私は誕生日に、彼女と私だけの躍動を撮ることにした。
誰も居ないスタジオで、いつも隣に居る時よりもわざと沢山の距離を置き、彼女との間を望遠レンズで遮った。
彼女の中に入り過ぎないようにとハイロウズで会話をごまかし、彼女がわざわざ早起きして巻いていたという髪にさえ触れなかった。
カメラを構えていると見えなくなることがある。だからそれを知っていたからこそ、彼女はあえてカメラを向けない相手でもあった。
無言でカメラを構えるレンズ越しの私に、彼女がたまにしてくる変な顔。それに私は形式的に笑って、また無言でレンズを覗く。
相手にされないことを察知してしまった彼女が、下を向いてゆらゆらと揺れ始める。
そのリズムは、まるで
つまんない つまんない と言っているようだった。
カメラを構えていると見えなくなるものがあるし、本当に大切なものは写真には写らない。
そうか、だから私は彼女にカメラを向けたくなかったんだ。
つまんない つまんない の躍動感。
これが、彼女の躍動だった。
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