フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
変化
投稿日:2011/10/30
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タイムリミットは4ヶ月だった。
4ヶ月以内に、私は変化しなければならなかった。
「4ヶ月」それは、彼女が青山に帰ってくるまでの時間だった。
この一枚の写真には、こんな背景がある。
4ヶ月前。
突然の湘南店勤務の話が出て、心がブレていた彼女。
まだ誰にも言わないでいてね、と相談された時、私の心もブレた。
正直、行って欲しくなかった。寂しかったし、彼女が居なくなることが不安でたまらなかった。
でも、「岡村なら、どうする?」と聞かれたとき
それを一人のカメラマンとして、考えたとき
私は迷わず「私だったら、行く」と答えた。
6月。自分の学習休暇を返上して湘南店のインテリアに参加した彼女は、
7月、8月、9月と、喜怒哀楽全ての感情を振り切って、失って、得て、大きくなって大きくなって青山店に帰って来た。
予想はしていた。彼女のことだから、とてつもない変貌を遂げて、とてつもない風を青山に吹かすのだろうと。
だから、そんな彼女に恥ずかしく無い様にと、私も変化をしなければならなかった。
10月。久々に彼女と一緒に入った撮影。
思い出す。この感覚。信じているし、信じられているこの感覚だ。
「自分の写真を180度変える」と意識して撮影に入っていた私は、今まで一度も使ったことの無い衣裳室での撮影を試みた。
新しい撮影というのは、好奇心と共に、恐怖心をも持ち合わす。
だが、私は恐くなかった。だってこれが、突然降って湧いたものではなかったのだから。
その子のイメージや、性格、背丈、取り巻く家族や撮影の雰囲気。
加えて、天気、光、時間・・・
そして何よりも、彼女とペアを組む撮影で、と決めていた。
全ての条件が、ガッと一致する瞬間が絶対にあるはず。
それをずっと目を光らせ、いつも見極めていたんだ。
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時間限定で衣裳室に注ぎ込まれる光に包まれたひかるちゃんは、
周りの色味豊かな洋服や小物たちのどれよりも存在感を放っていた。
この写真でポイントになった眼鏡の向きも持ちかたも、
上に羽織ったレースのはだけ具合も、立ち位置も、
すべてひかるちゃんによるものだった。
私にとって、新しい撮影をする為に大事な要素である、撮影の雰囲気や、その家族に対する気配りはコーディネーターのウンジョンさんが作り上げてくれたもので、
カメラマンの私は、ひかるちゃんを光から少しだけ逃がし、青山店の散らかった背景の洋服や小物をどこまで写すか瞬時に判断し、1枚の画として見た時の被写体の配置のバランスをキャッチするため、自分の目線の位置を変える。
そして、あとはシャッターを切るだけだった。
それで生まれたのがこの一枚である。
みんなで作り上げた一枚だ。
やっぱり。予想は的中した。この瞬間を4ヶ月間ずっと待っていた。
湘南店に行ったのが、彼女で良かったと心からそう思う。
だからこれは、彼女に贈る「おかえりなさい」のプレゼント。
変化の風が、青山店に吹いた瞬間だった。
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