フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
それ、私じゃないから
投稿日:2011/10/31
259 1

人に対してもっと敏感にならなければいけない。
それに気付かせてくれたのが彼女だった。
彼女がやってきたのは最終枠の撮影だった。
外はもう暗い。1日の締めくくりの時間からの撮影に、あまり乗り気ではない様子だった。
それでも最初はこちらのお願い通りにポーズを取ってくれた。
だが途中から、ぱったりとやる気が尽きてしまった。
この年の女の子は、緊張で硬くなったり、もじもじと恥ずかしそうにしていることが多い。
どちらにしろ、着物やドレスが着れて嬉しいお年頃だ。
しかし、彼女は違った。
「はーあ」とでも言いたげな表情で猫背になる。
宥めすかしても無駄、というか逆効果。大きなため息を吐き出してから、そんな様子だった。
この時、ふいに子ども扱いを止めてみようと思った。足をブラブラ、不貞腐れている顔をみて、何だかそう思った。
その子自身を見ずに「7歳の女の子」というカテゴリーで彼女を見ていることに気が付いたからだ。
それは彼女自身ではない。
決めつけは、物知り顔の大人のやることだ。ここでやるべきことじゃない。
そうして話をしてみると、彼女の強くて凛々しい性格が徐々に表に出て来た。
堂々とした性格、姉御肌。それが彼女本来の気質だった。
ポーズもクールなものが似合った。
甘ったるいポーズは取らせない。
だって、それは彼女じゃないから。
笑顔も要求しない。姉御はもっとどっしりと構えるものなのだ。
帰り際、彼女はハート型に折ったお手紙をくれた。
まだ7歳、されど7歳。
お母さんと帰っていく後ろ姿を見送りながら、型にはめようとしてごめんね、と小さく詫びた。
この記事をシェアする