フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

ロングアイランド・アイスティー

投稿日:2011/11/28

267 0

 

正直に言って、彼女のコンディションは、

このとき、それほどいいものではありませんでした。

私は下手に近づいて、これ以上彼女の機嫌をより損ねてしまうのが怖くて近づけず、

口も利かず、息を殺し、距離を保ち続けました。

長く撮影していると、こういう撮影はよくあります。

 

だけど彼女はお化粧をしている時や

髪の毛をきれいにしてもらっているときは、

とても嬉しそうにしていたというのです。

 

だとすれば原因は私だったのでしょうか?

 

女心と秋の空。

 

言葉にしてしまうとそれまでですが、

子どもにだって意志はありますし、笑いたくないときはあるでしょうし、

気分が乗らないときがあるのでしょう。

撮影の後半になってテンションが上がる子もいますし、

後半になっても上がらない子もいます。

男の人が苦手だったり、大人の人が苦手だったり、

人間ですから、子どもと言えども仕方ない部分もあります。

 

だけど、そこから何を見出すことが出来るのでしょうか・・・

そういうときに仕事をしてこそ、

カメラマンとしての真価が問われるのでしょう。

 

一枚でも多く、彼女をとらえ、彼女を残せるように。

 

私は、彼女の中にある、

「私の目には見えない、彼女の考えや想い」

「心の壁」

「簡単に心を許さない強さと意志」

 

そんなものを表現するために、

画面の半分以上を暗くし、

髪の毛をいじる彼女に、声もかけずにシャッターを切りました。

コントラストを上げ、よりダークな印象を演出しながら。

 

笑顔の写真も何枚か撮れましたが、

私は、この日の彼女のこの表情と、

自分の心情とがある意味で一致したこの一枚の写真が、

とても深く心に残りました。

 

何度も唇を噛むような歯痒い思いをしたのですが、

それはきっと彼女も同じなのでしょう。

 

写真を撮る方も人間で、撮られる方も人間。

 

ロングアイランド・アイスティーのように

見た目はアイスティーのようでも、

目ではわからない、

確かめてみなければわからない、

思いのほか強く後に残る刺激を、感覚として思い出しながら、

私は何度もこの写真を見返し、

その度に次に会う時は彼女がどんな風な女の子になって来てくれるのか、

楽しみにしているのです。

 

この記事をシェアする