フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
美しい人 1
投稿日:2011/11/30
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6ヶ月の赤ちゃんの撮影は、時間勝負なところがあって
つい、ずっと赤ちゃんにばかり集中してしまう自分がいます。
撮影中、泣き出したこの子。
お腹がすいているのか、人見知りをしたのか、眠たいのか
答えは、眠たいだった。
6ヶ月の赤ちゃん。
小さい体で全力で笑って、全力で泣いて、全力で寝ていた。
撮影中なのに寝てしまったその子を抱きながら
少し残念そうだったママ。
でも、それでいいんだって間違ってないんだって伝えたくて
その子のリズムを大切にしたくて
「寝かせてあげてください」と言った。
寝顔を見ながら、「ああ、気持ちよさそうだなあ」って
全力で寝るこの子を見て
ただただ生きているんだなあって思いました。
静かな部屋で、この子の寝息だけが聞こえていた。
光が綺麗すぎたので、寝顔を一枚撮ろうとカメラを向ける。
単焦点レンズで撮っていたので、少し、距離を置こうと後ろに下がった。
この部屋のドアをあけ、自分の身体を外に出すくらいに距離を置く。
ハッとした。
寝てるその子のそばに、ママが居た。
居ることじたいは、気づいていたけれど、
あまりにも彼女のその姿が、表情が、
傍にいるよって優しく置かれたその手が美しくて
私は素直に「ああ。美しい人だなあ」って思った。
いつか
あるカメラマンに、私の写真を見せたとき
「ああ、綺麗だなって感じ」と言われた。
違う人に見てもらったときにも「綺麗でバランスが良いけど、綱渡り」と言われた。
そして、また違う人に見てもらってもそうであった。
私は特に綺麗さに偏った注力をしたことはなかったので、
複数の人間に同じことを言われ正直驚いた。
そして、悔しかった。とても。とても。
それは、私の写真には綺麗さだけで人間らしさがないと言われているような気がしたからかも知れない。
そして誰よりもそれを自分自身が痛感していたからこそ、悔しかったし、
足りない部分を埋めなければならないと思った。
だからそれ以来私は、「人間くささ」「本当の意味でのカメラ目線」「その家族の背景」にも特に目を向けるようになった。
でも、やっぱり
ハッとするほど美しい人を見ると、その美しさにただただ心が満たされるときがある。
この時も「美しいなあ」って気持ちだけでシャッターを押していたような気がする。
よく、「あなたの写真には何が写っていますか?」と聞かれるけれど、
やっぱり私が美しいと心から感じたものが、そこに美しく写っているのかも知れない。
特別美化しようなどという欲はない。
ただ、美しいものを美しいと感じてカメラを向けた。
ただ、それだけだった。
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