フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
クローズアップ
投稿日:2011/11/30
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静かな時間が流れていた。
日が沈む少し前、湘南倉庫での撮影。
開けた窓から風は入ってくるけれど、この日の風はどれも静かで
彼女の髪の毛を少し揺らす程度のものだった。
彼女の横顔が好きで、よく見ていた。
初めて出会った時から、いつか彼女の横顔の写真を私は撮るんだろうと思っていた。
彼女ならではのラインをシルエットで見せたくて、アンダーにアンダーに追い込むために私は日が沈む数分の時間を狙うことにした。
夕暮れのあの赤い光を追いながら、そして逃げながら撮影していく中で
ふと流れが止まった瞬間があった。カメラを一旦下ろして、話すのをやめた。
これはクローズアップだと思った。
クローズアップの写真というものを、自分なりに考えていた。
クローズアップ写真に集中する中で感じたことは、
被写体の表情に説得力がないとただの顔を大きく写した写真になってしまうということと
照明の当て方ひとつ、また余白の微々たる作り方によっても、世界観やバランスが大きく左右してしまうものだということ。
写りこむ要素が少ないだけに、そのバランスのとり方が非常に難しいもののようだった。
そしてもうひとつ感じた大きなこと、
それは形式的に撮った写真では駄目だということ。
その時間、撮った写真を1枚1枚見る中で、ふと目の止まる瞬間。
流れの中で、見ている者に何かしらを訴えかける1枚。
それがクローズアップだと、私は思う。
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