フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

後ろ姿の二人

投稿日:2011/12/30

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写真は様々なものの交点に存在するものではないかと思うことが時々ある。
この日この写真を撮ろうと考えたこと、撮らせてくれるコンディションの二人。 この光を思いついたのも、この写真に必要なものだけの配置を考えたのも、この場所で、このアングルで、二人の目線があった瞬間にシャッターボタンを押そうと思ったことも、全てこの日の撮影が始まってからのことだった。


以前、他のカメラマンが撮影した写真を横浜店で再現することを考えたときに適切だと選んだ場所はこのインテリアだった。


その写真は湘南店の河野さんが撮影した、全体的にアンダーでハイライトが利いた一枚。 横浜店でこの写真の話をした時、他のカメラマンはこの場所ではないのではと話していたが、この時、既に僕の中でこの写真のイメージが出来上がっていたのかもしれない。


頭の中に明確なイメージがないとその写真は撮れないと言う言葉の意味は、必要な要素を適切に取捨選択する写真という方法論の性質上、理解していないと要るか要らないかが分からないから、という意味ではないだろうか。


通常、この場所にはいくつかの物が配置されており、先ずはその必要性を考える。 再現する写真の特徴は圧倒的な影の存在である。


適正露出に比べるとだいぶアンダーになるように設定する。つまり暗い写真である。


被写体以外の大きな要素が光と影とする以上、その他の余分なインテリア家具などはすべて排除した。


河野さんの言葉にもあるように「子供の写真=明るい写真」という定説というか先入観からの脱出を経たのちに見つけられる価値観である。


光を捉える表現である写真が影の表現をするにはやはり光が必要である。 今回、選択した光は逆光。 アウトラインのハイライトと全体を覆う影の存在とのコントラストで影の存在を際立たせ、暗さに意味を持たせる。 この日は薄曇りで自然光は十分な量ではなかった。


強い自然光が入る日の方が、きっとコントラストを持っときつく出せただろう。


しかし、撮った写真を振り返り、この光量で良かったのだと確信する。 それは被写体が二人だから。


被写体が二人の場合、その関係性という要素が入ってくる。 例えばもし、強い自然光により、きついコントラストのシルエットの写真を撮ったとしたら、全く描かれるものが変わってしまう。


光の中のシルエットにより浮かび上がった二人の姿は強烈なイメージとして描かれるだろう。


それも、もちろん美しいと思う。


しかしその場合は、二人の姿よりもイメージが先行してしまう。


光の状況もあったが、今回は二人の姿とその関係性、そして二人から感じた子供らしさを描くことにした。 イメージへの傾きを、二人を主役の座から奪わないギリギリのラインでシャッターをきる。


背景とのバランスは窓の位置との兼ね合いを考えた。


高さの違う左右の窓。


窓と被写体が重なること、つまり大きな要素が一直線上に重なってしまうと、そこだけ密度が高くなり、何を表現したいエリアなのかが不明確になってしまうため、被写体が可能な限り、窓にかぶらない様に気をつけた。


また、カメラを構える位置だが、ここは木の板の横のラインが強い印象を与えるので水平で撮ることと窓の四角がゆがまないことに注意をし、全体的に「静」のイメージが漂う様にした。


 

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