フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
距離感
投稿日:2012/1/28
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この子の撮影は僕にとって特別なものだ。
1才の撮影の後も連絡を取り合ったり、イベントで会ったり、お客様とスタッフという関係以上の時間を過ごすということ、人と人との当たり前の関係を築くことを教えてくれた家族。
ただそれだけでも思い入れてしまうのだが、実はこの子の撮影で笑顔を残すことが出来ていなかった。
1回目も2回目も緊張と人見知りで表情は強ばり、3回目の七五三は眠いのもあって着物を着ることもできず、カメラを構えることすらもしないまま帰る姿を見送った。
この日は七五三のリベンジ。
もちろん今回も表情が和らぐことなく撮影が進むことも覚悟し、せめて3才の七五三の記念を形に残したいと思い準備を進めた。
無事に着付けを終えて出てきた晴れ姿を見ることができただけでも喜びで胸がいっぱいになったのに、思いもしないことが起きた。
カメラを構えファインダーの中にいるその子が笑っていた。
親御さんが子供の成長を喜び、涙するのはきっとこんな時だろう。
自分の子供ではないのにそう感じて涙目になりそうになりながらシャッターを切った。
もしかしたら親御さんが自分の子供の写真を撮る時と同じように僕は写真を撮っていたのかもしれない。
この一枚は唯一、一撮影者としての距離を保てたように思う。
不意に見せた仕草を最大限魅力的に感じれるように、自分の指が反応した。
撮影者と被写体との関係性、心の距離感は写真の仕上がりに大きく影響を与える。
もちろん、その距離が狭まれば良い写真になりうる可能性も高くなる。
今の時代、人と人との距離を詰めることがとても難しく、カメラマンはこの点で頭を悩ますことが多い。
でも、例え近くなったとしても、ある種、冷徹なほど冷静に美しさを求める感覚、心を同時に持ち合わせないといけないとこの一枚を撮ったときに感じた。
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