フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

瞬間の描き方

投稿日:2012/2/29

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瞬間とはその直前でも直後でもない点のような一瞬。

その一瞬をより明確な一点として描けるようにするにはどうしたらいいかとずっと頭を悩ませていた。

 

そこで光を限定することにした。

写真において光が当たる範囲=存在している範囲とするなら見せたい所にだけ光を当てることによってその他の要素を消すことはできないかと考えた。

しかしそれでも自分にとってそれは1点として感じられなかった。

 

次にスツールを被写体との間に置き、画面内に大きな影の部分を作り出した。

それでもなにか足りなかった。

 

そこでシャボン玉を吹いてもらい、女の子の意識を足元に落としてもらった。

 

そしてシャッターを切った。

 

あえて視線を落としたのは目線がカメラに向いていると、写真を見る側に対する被写体の存在感が強く現れると感じ、そのインパクトで全てを上塗りされてしまうと感じるからである。

目線を上に向けたときと下に向けた時とでも感じ方は違う。

上に向けたときは前進や向上のような「動」の印象を与え、逆に下に向けたときは落ち着きや安堵等の「静」の印象を与える。

そう考えている。

目線を引くための方法としてシャボン玉を選んだのはその儚さや繊細さと共に、その配置で留まることが正に一瞬であるから、瞬間という刹那を感じさせるように思ったからである。

 

衣装を白で統一したのも、手を胸元に置き、動きを感じさせない様にしたのも同様に、「静」の中にある繊細な1点を探し出そうとしたから。

 

「静」の中にあるからこそシャボン玉をみて動いた女の子の心が際立って見えてくるのではないだろうか。

色味が暖かいのがこのシチュエーションに相応しいのか迷ったが、目の前で嬉しそうにシャボン玉を追いかけている姿を見ていたせいか、

子供らしさを残すという意味で色の調整はしないことにした。

 

きっとこの子が笑顔も見せず、緊張で張り詰めた雰囲気を持っていたらこの色は選ばなかっただろう。

 

 

日常の中に潜んでいるが心を落ち着かせないと気づくことすらできないフラジャイルな美しさをいつも探している。

 

 

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