フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
キャベツ
投稿日:2012/4/29
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何も書いていないノートと、色とりどりのクレヨン。
君はそこからみどり色を一本だけ握りしめ、
ぐるぐるぐると絵を描いた。
一体なにを描いたんだろう。
自分の名前?ママの顔?パパの顔?
それなーにと聞くと、一言
「キャベツ!」
と言った。
キャベツ。なぜキャベツ。
きっと、君はキャベツを描こうと決めてみどりを取った訳ではなくて
キャベツが食べたくなってキャベツを描いたんじゃなくて
トマトでもかぼちゃでも玉ねぎでもない。
それが他のなんでもなくキャベツなのは、
君が本能的に握りしめたそれで、本能的にしたぐるぐるで
私が声をかけたがために止まってしまった
その小さな芸術家の小さな手が生んだ
そのぐるぐるの大きさと形と、そして色が。
はじめから決めていたわけではない。
型を作ってそれにはめて動いたわけでもない。
つまらない見本なんてないし、
誰に言われて描いたわけでもない。
自分が選んだその色で、自分が掴んだその色で
自由に生んだ。
それら全てに名前を付けるのだとしたら
それが君にとっての「キャベツ」だったんだよね。
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