フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
横位置写真における核心と収束について
投稿日:2012/8/5
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舞い降りるシャボン玉に向かって手を伸ばす子供。
このシチュエーションは、子供の志向性や写りこむシャボン玉との関係設定のしやすさから、頻繁に使用するシチュエーションだ。
この場合、子供のとる姿勢や、シャボン玉の位置関係から、必然的に縦写真になることが多い。そうすることによって必要最低限の要素で構成することにより、このシチュエーションのテーマが強調されやすくなるためだ。
この写真では、そうしたテーマを損なうことなく、横位置写真の持つ構図的な美しさを加えることを試みた。
この写真を、窓枠奥の柱部分で左右に分割すると、それより左側はほぼ縦位置で撮ったときと同様の構図になる。
これにより、このシチュエーションが持つバランスやシャボン玉と被写体との関係設定を演出することができる。
さらに、被写体の背後にもっとも高い露出を持つバックライトを配置し、見るものの視線が自然とそこに向くように誘導する(左上の丸い窓が入ってしまっているのが非常に残念な部分です。これがなければさらに被写体に集中できたでしょう・・・)。
バックライトの枠内にあるのは、被写体の顔、手、シャボン玉の3つであり、このテーマのもっとも核心部分であるといえる。
被写体の下半身部分には前景に二つのカゴを配置することで、形状が認識できる程度に保ちながら、その存在感をわざと曖昧にして、核心部分への注意が散漫にならないようにしている。
写真の右部分については、広角レンズで撮影することによりブラインドや窓枠が作り出す奥行き感による方向性を生み出し、それらが最終的にテーマの核心部分に収束するように構図をとった。
手前に開けた窓から見える外の景色は季節感や、静けさなどの空気感、外の世界と中の世界の隔離などといった要素を、隠し味のスパイスのように演出することで、写真全体に動きや変化といったものを与えている。
そうした役割を演じながら、写真手前から奥にかけての露出の変化を生み出すという一番大切な仕事もこなしているといえないだろうか。
横位置写真に一番必要な要素である全体的なバランスを保ちながらも、そこに写りこむたくさんのものが、ひとつのテーマの核心部分を表現するというひとつの方向性を持っていることの大事さを、この写真から学んだように思う。
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