フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
家族の作る空気
投稿日:2012/8/23
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ライフスタジオでは写真の要素として「関係性」という言葉がよく出てくる。
しかし笑顔やインテリア、コーディネートの様に目に見えるものではない「関係性」とはどの様に表現したらよいだろうといつも頭を悩ませる。
家族写真を撮るにあたって「自然な雰囲気で」とご要望頂くことが多いのだが、その「自然な雰囲気」を表現することが出来たらそこには関係性というものが含まれるのではないかと考えた。
しかし「自然な雰囲気」と言っても実は簡単ではないと思っている。
スタジオのインテリアの中も真っ白な部屋もどこを見ても日々日常の中にある風景は欠片もない。
着ている服も子どもさんはスタジオの衣装を着ている場合もあるし、お父さん、お母さんもおめかしをしている。
もちろんそれらの事が悪いことと言っているわけではない。
求めている「自然」にどう近付いていくか、というのが重要である。
この写真は、実は3人の写真ではなくお父さん、お母さんの2ショットを目的としていた時間に撮った一枚である。
お二人にうつぶせをしてもらって見つめ合って、顔をくっつけてカメラ目線でと2~3カット撮りたかったのだが、そこにお子さんが飛び込んできた。
実はこの様なシチュエーションも普段から全く無いわけでもないのだが、想定をしていないという点では一種のハプニングである。
そのハプニングに対して、被写体のお父さんとお母さんが見せた指示も意識もしていない、無意識の反応。
そこの中にいつもの「自然な」表情が垣間見えるのではないだろうか。
もちろん写真を撮るにあたって、ある程度の制約と秩序が必要である。
いつもの姿だからと全員が走り回ってしまったら撮ることは不可能だし、あらかじめハプニングを用意しておくことも出来ない。
では写真を撮るために必要な秩序と偶然性がうまく重なる運の良い時でないと「自然な」写真は取れないのだろうか?
日々沢山の写真を撮ってきて、そうではないと感じている。
写真を撮るために必要な秩序とは単純に考えればファインダーの四角の中におさまっているという事。もちろんその中でのバランス、構図、色調など、カメラマンの領域で調節できる要素が沢山ある。しかしもちろん制御できない要素も数多くある。スタジオの撮影において一番操ることができないのが自然光の移ろいであるが、操ることは出来なくとも制御することはある程度出来る。また部屋によってはそれを補ってもまだ光が余る場所がある。横浜店ではそれがこのホワイトルームだ。
家族写真をこの空間で撮る理由はいくつかあるが、しぼりやシャッタースピード等のある程度の制約が課せられる家族写真において安定した露出が確保できるというのがひとつの大きな理由である。
一人ひとりの被写体が可能なポーズは人それぞれであって、それに対応する準備が一番整うのがここ、ホワイトルームだと考える。一番準備が整う場所であれば、予期せぬことが起きても秩序を保ったまま対応が可能であるから、目の前で起きる様々な「自然な」仕草を写真におさめられる可能性は格段に高くなる。
また、ホワイトルームで撮ることにはまだ理由がある。
背景が真っ白という事は背景に左右されずに自由な表現が可能ということだ。
たとえ子どもがかわいい仕草をしたとしてもその背景と仕草がマッチしているかというのは瞬間的な判断に影響を与える。
また、家族が見せてくれた雰囲気を背景という要素が入ることによってそこに集中できなくなる場合がある。
それを払しょくしてくれる場所であると感じている。
思いつく限りの自由を用意して、そこで繰り広げられる家族の時間を静かに写真に収めることが出来たら、きっとそこに「その家族の自然」な姿が写真におさまるのではないだろうか。
お父さんとお母さんがニコニコしていて、そこに自分も入りたくなっちゃった。
子どものストレートな感情と行動、そしてそれを受け入れたご家族の笑顔。
そこに何も作為的なものは存在しない。
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