フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

投稿日:2013/2/6

291 1

 

よく想像するのは、このカーテンの向こうのガラスの扉をあけて

左に曲がると、もしかしたらそこは海なんじゃないかということ。

海岸道路に続く道には、日光と雨水だけで育った草花がトンネルをつくる。

小道の奥には水平線が見えて、キラキラした水面とあったかい太陽の光がこちらを照らしているのだ。

いつか、そんな場所にスタジオをつくりたい。

海が近くに無いことが、こんなにも不便だなんて東京に出てから知りました。

海を見ながらひたすらぼんやりすることが、自分にとってこんなにも重要なことだということも、また知りました。

 

小さい頃からそうだった。

私は裸足でその道を歩き、海に行き

いつも通り洋服のまま海に入ってしまう。地元民はみんなそうだ。

疲れたらあがり、そのまま砂浜で寝るだろう。

強い太陽に照らされるもんだから、洋服は何事もなかったように

カラカラに乾き、私も何事もなかったかのように家に帰る。

でも、ポケットの中には砂がいっぱい張り込んでいて

洗濯のときに母親にこっぴどく怒られるのだ。

そんなんがいいと思った。

自分の人生が、そうであって欲しいと。

 

いい天気だった。

スタジオから外を眺めて、そんなことばかりを考えていた。

「もしかしたら」と、外にでてみたけど、

左に曲がるその道の向こうには、東西線の灰色の鉄橋があるだけだった。

 

「お願いします」と、コーディネーターに名前を呼ばれる。

私はいつも通りカメラを構える。

その瞬間が、とても好きだ。

 

 

 

この記事をシェアする