フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

Marbling

投稿日:2013/2/23

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直訳すると大理石模様というらしいが、今回この写真に添わせる言葉を選ぶときにイメージしたものは大理石そのものではなく、絵画の技法の方のマーブリングである。

 

水面に絵具を垂らし、混ざり合う模様を紙に写し取る技法。

 

この一枚を撮影した瞬間はまさにそのマーブリングのような絶妙で淡い調和が成された様に感じた。

 

写欲という言葉がある。

読んで字の如く、写真を撮りたいという欲求であり、写欲をそそられる被写体に出会える事程、カメラマンとして嬉しいことはないだろう。

 

この子はまさにそんな存在だった。

 

しかし、毎日スタジオで撮影していると、ありがたい事にそんな被写体に出会うことも珍しくはない。

では、普段と何がちがったのか。

それはこの撮影に携わった人間の意識が、それぞれの主張を保ちながら程良く混ざり合い、この一枚へと繋がった事だろう。

写真はカメラマン一人で撮影出来るものではない。

被写体の存在とカメラマンとの対話があり、ライフスタジオにおいては特にコーディネーターの存在に依存するところも多い。

もちろん、その撮影を見守る親御さんの雰囲気も撮影に影響する。

それら全てが絶妙なバランスで調和を保った時にフォトジェニックは生まれるのだと思う。

 

ライフスタジオではいつからか「アシスタント」ではなく「コーディネーター」という名称がつかわれる様になった。確かに「アシスタント」という名称だとカメラマンに従う存在という印象を感じてしまう。しかしライフスタジオにおいてそれは間違いである。

 

物を生み出す事において、写真に限らず新しいものは全くの無から生まれることはほぼない。それだけ先人達が研究と追及を重ねてきた結果である。

では、新たな物を生み出すにはどんな方法が必要か。

それは既存の価値観の組み合わせ、つまりカメラマンの価値観とコーディネーターの価値観の融合である。

 

以前もこの空間で撮影していたが、その写真をコーディネーターの谷津さんは見ていてくれたのだろう。自身の中でイメージを再構築し、サングラスを用意しながら「クールなイメージで」と一言添えてくれた。

僕はその言葉に合わせ、ポージングを指示した。眼鏡をおろす仕草は自分で指示したものか、谷津さんからのものか、あまり覚えていない。それくらい二人の中でイメージの共有が出来ていたことの表れだと思う。

 

また、普段なら気にするサングラスの写り込みも、モノクロで撮るのであればこのコントラストが生きてくるという、谷津さんの判断だった。

 

この様に撮影に入っているスタッフがお互いにカメラマンとコーディネーターの役割の境目を超え、それぞれ最大限の仕事が出来たこともイメージの確立に必要不可欠だった。

 

そしてモデルの女の子もたぶん僕らの雰囲気を汲んでくれたのだろう。

僕らがイメージした通りの表情と仕草を見せてくれた。

 

その場にいる全ての存在の意識や思いが写真と言う小さな枠の中で絶妙なバランスを保ちながら、存在感を現す。

 

写真に写り込むものはもちろん当然だが、ファインダーの外の雰囲気も画に繋がって行くことをこれからも証明して行けるような写真を撮っていきたい。

 

 

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