フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

「そして、あなたと出会い、旅に出る」

投稿日:2013/8/31

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Gallery photo by Volvo  code by Mai Kobayashi

 

■Photo Story

6月にギャラリー店のインテリアのコンセプトを考えたことがあった。

ギャラリー店のコンセプトは「共に森になろう」だが、インテリアのコンセプトは私の中でイメージとして常にあるのは「タイムスリップ」。

かつて、小さな少年少女だった大人たちが足を踏み入れた瞬間、なんともいえない懐かしさを感じるような空間。

眠れない夜に読み聞かせてもらった絵本、大切に連れ歩いた車のおもちゃやくまのぬいぐるみ。内緒で見つけて秘密基地にしたツリーハウスや、子供しか通り抜けられないような緑のトンネル。そんなギャラリー店のモニター室の横にあるインテリア、それがこの「列車」空間である。

この列車に乗りそっと小さな窓をのぞきこむ。そこにはかつて、日がくれるまで遊びに夢中になった野原が広がっている。

季節を告げる葉、耳を澄ませば川のせせらぎが聞こえてくる。そんなイメージを膨らませていた。

この列車で旅するのは、かつての自分と出会うための旅。

 

列車が止まり、ふと通路側に目を留める。

そこには小さな少女が立ち尽くしていた。初めて出会うはずなのに、何処かで出会ったことのあるような妙な気持ちになる。

「どこへ行くの?」思わず声をかける。

すると、少女は恥ずかしそうにうつむき、こう答えた。

「これから、パパと一緒においしいご飯を食べるの」

視線の先にある少し大きめのかごバック。きっと中にはお弁当が入っているのかな。

「パパはどこにいるの?」

周りを見渡しても少女のパパらしき人物はいない。すると、少女は澄んだ目でこちらを見つめてきた。その瞬間、懐かしさを感じた先ほどの自分の感覚を確信した。

彼女は、今私が愛している妻の幼い頃の姿だった。

 

みたいな・・・そんな、物語を私はこの写真をみた瞬間描いた。

つまり・・・。ギャラリー店の裏コンセプトである「タイムスリップ」のタイトルにぴったり当てはまる1枚だった。

 

■分析

この写真には、そんな想像をさせるための手法が見られる。

お気に入りのワンピースに身を包み、大きなバスケットバックを両手で大切に持ち上げる。

このバッグが重量感を感じさせるような暗めな色彩のバッグであったら、被写体の下半身が一気に重く感じ、ワンピースの軽やかさが際立たなくなる。そして、全体の色彩の統一感を感じさせてくれている。

 

次に、光。恐らく、この写真は光を多く取り入れるために光をまわし、全体的に明るい雰囲気での光となると、被写体をうつむきにさせるという動きが生かされない。うつむいた被写体の頬のラインを優しく照らす光と反対のイメージを抱く影。

この影があるからこそ、この写真から、静かな時間の流れを感じる。

このバッグをじっと見つめているしぐさに、見る者は様々な創造力を欠きたてられる。

写真の構図が被写体を中心にトリミングをさせ、彼女の表情に集中をさせることも出来たとは思う。だけど、彼女の表情やしぐさ、そしてこの光はこの背景あってのもののようにも感じた。背景の中に溶け込むような存在でありながら被写体に視線を奪われる。

 

私がこの写真を今回提出したい。

そう思ったのは、私の描いていたこの列車の場所での物語と彼女の存在があまりにも当てはまり、本当に嬉しくなったからだった。

お写真の許可をしてくださったママさん、本当にありがとうございました(^^)

そして、Volvoさん、マイマイ、ありがとう。

 

 

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