フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
理由
投稿日:2014/1/19
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髪が長くてきれいな人をみると、その髪を逆光で照らした少し赤く透ける瞬間を撮りたいと思う。
目が大きくてきれいな人をみると、その黒目に自分はどう写っているんだろうと真正面から挑みたくなる。
横顔がきれいな人をみると、適切な照明を使ってその美しい横顔をより美しく残してみたいなあと思う。
写真を撮るときには理由があります。
よく「説明のできない写真を撮ってはいけない」と言います。なぜ、この人で、この場所で、この光で撮ったのか。
自分の中にイメージはあるのか?そのイメージに近づくために、何が必要なのか。
カメラマンはそれを知っていなければならないし、掴み取らなければなりません。
そういった説明が出来なければ、意味もなくただ義務感にかられてシャッターを切っているだけになってしまいます。
先日、どうしても会いたいお客様が居たのでギャラリー店まで行って撮影をしてきました。
その中の写真を、写真分析したいと思います。
私は朝ギャラリー店を掃除していた際この壁を見つけ、一目で惹かれました。そして同時に、これは絶対にモノクロだと考えました。
理由は、自然についたコケと、室外機の温風と湿気で色の変わってしまった壁。汚れと、朽ちた緑。私はよく、そういった様々な質感を含んだ素材をモノクロで撮影します。理由はひとつ、その質感のみを活かすためです。
そしてそこは、日当たりの良い野外のギャラリー店で珍しいほどの暗さを持った場所でした。
この場所に人を配置するなら、光はどこから来るのか。被写体の顔はどこを向かせるのがいいのか。
答えは自分の中にありました。
被写体の骨格、彫りの深さ、目のきれいさ、力強く優しい表情・・・彼の持っているそれ全てを活かすためにコントラストとシャープネスを調整し、ハイコントラストのモノクロで撮影することを選びました。
面と面の明暗と質感の違いで遊びたかったので、左側に明るい面を4分の1程入れることにしました。
全てに理由があり、説明が出来ます。
きっと別の撮影者が撮っていたら違う写真になっていたように、正解はないけれど、自らの中にイメージのゴールを用意しておくことは、撮影者にとって必要不可欠なことなのではないでしょうか。そのゴールが想像力と創造力、そして観察力を掻き立てる大切な要素になってくるのだと思います。
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