フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive

『目』

投稿日:2013/7/21

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photo by volvo codi by sora in SOKA
 
 
良い写真を作る条件のひとつとして被写体と自分との関係がある。
 
撮影の条件はアシスタントが作ってくれるここのシステムはカメラマンは黙っていてもシャッターさえ押せば写真を撮る事はできる。
しかしそれでは自分が何を撮りたいのかわからないままただ漠然と良さそうなものを切り取っているに過ぎず、アシスタントがいなければ何もできないカメラマンとなる。
 
だから私は撮影前に子供達に近づく。
自分の存在を認めてもらえなければ写真を作る事ができないからだ。
特に男だと、尚の事打ち解けるまでのハードルが高かったりもする。
 
Aoiちゃんファミリーと出会うのは2回目。前回の出会いから一年以上ぶりだったが、変わらぬ家族の明るさと背が伸びた2人の姉妹を見ていて当時を思い出しながら撮影をした。
2人は私の事を覚えていてくれて、上に書いたような準備は必要の無い撮影だった。
 
はじめから息の合った撮影。
一度しか撮影をした事の無い草加店と、これもまた一年以上ぶりに一緒に撮影に入ったsoraのコーディネートが私の狭い世界には無かったエッセンスを加えてくれる。
 
結婚記念日にキャンセルをせざるを得なかったママさんの気持ちを少しでも明るくしたくて撮った夫婦写真や、月に何回も会う事ができないパパさんに出張先に持っていって欲しい子供達との3ショットなどを撮ってあげたかった。
 
そしてこの上なく大人っぽくなったAoiちゃんのふとした瞬間の目。
この目を見た瞬間になぜ私がここに呼ばれたのかを感じた気がして、絶対に押さえなければいけなかった。
 
この写真は『目』が全てである。
持ち物までトータルコーディネートをしてくれたsoraの様子を見ながらそれに合う明暗のはっきりした場所を探した。
草加店は向きによってテイストが全然違う。この場所はシックな雰囲気で彼女の姿にはぴったりだった。光は左からくる蛍光灯のみなので左の扉によって光が変わってくる。
 
最初は扉を開けて(光を切って)いた。
 
アンダー気味の雰囲気で色んな写真を撮る。
途中で変化が欲しくなって光を欲した。
 
私が自分で左の扉を閉める事もできたが、彼女自身に扉を閉めてもらう方がポーズも変わり光も作れて一石二鳥だった。
その瞬間伝えた「まぶしい方見て」の一言によりこの写真は80%できた。
 
つまり光を彼女自身に作ってもらった。
 
しかし残りの20%を作り出すには「表情」が必要だった。
だから左を向いた時に私が表情を作る何かを言おうとした瞬間、彼女はこの表情をした。
 
「そういえば彼女は撮影の為にモデルの練習をたくさんして来てくれていたんだった」
 
もし目がこれではないどこかを向いていたらこの写真は原本の中には入っていなかっただろう。
私達が良い写真にしようとした努力に彼女の努力が乗っかった瞬間だった。
この目の輝きに吸い込まれるように私はピントを合わせた。

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