フォトジェニックアーカイブPhotogenic Archive
寄り家族 shonan
投稿日:2012/9/28
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ある日浦安店に行き、事務所の壁に見覚えのある写真が貼ってあるのを見つけました。
「寄り家族」
赤色で書かれた文字、そしてどのように撮られたかが書いてあり、
写真に対しての主題と試みが浦安店から集中して行われていることを感じました。
集中することにより、明確にどのような写真を作り出すのか、その為には何が必要であるかを考えなければなりません。
ただ、いつも同じ条件で同じ撮影をするだけではない状況やスタッフ間の向上心のあるスタジオにおいて、このような月々、そして日々の集中の積み重ねこそ、写真のクオリティ、レパートリーの向上に書かせない要素であると考えます。
寄り家族が主題になった理由において、今まで家族写真においてどこからどこまでを入れるかを考えてはいたが、体をカットするほどまで、あまりそこまで寄ることがなかったということが挙げられていました。
寄り家族についてわたしが持っている考えとしては、その家族だけの形や空気に集中と計算を施し、そして一歩、いつもより寄ることによって、距離だけでなく被写体と共に感情までが振り切れるまでのものを写真として語れるように表現をする、そのようなものです。
浦安店に提示されていた写真は、はつらつとした女の子の笑顔が中心にあり家族で笑い合っているものでした。
ご家族自身が醸し出す空気が楽しくて元気で、わたし自身もその形を寄り家族としておさめることによって家族全体の生き生きとしたライブ感を切り取りました。
撮影において、楽しくてなんぼ、笑ってなんぼという思いが基本的にはあります。
それでも、いつもよいタイミングで楽しさ溢れるような空気が現れるとは限りません。
特に、小さなbabyにおいては初めてのその場の空気だけで不安になったり、笑えなかったりもしてしまいます。
このご家族の撮影においても、家族写真のとりかかりはご家族全体の形をヒキ写真として切り取りながらカメラマンもコーディネーターも少しでも緊張をほぐそうとあれやこれやをしましたが、それでもまだまだ1歳さんは不安な顔。。。
笑っていないからといって、残念な写真にはしたくない。
むしろ、この姿を大切に残せないだろうか?
こういう時には、どのように今のこの姿を切り取れるだろうか?
選択が必要です。
静かなメロディーには、優しい音色を。
何の楽器で、どのようなテンポで、どのような曲調で、、、ひとつのメロディーに適切なハーモニーを重ねてゆくには、
今までの引き出しを探って、どのような組み合わせで曲を作るか。
そのメロディーを写真として、自分たちにできる最大限の配慮と、形を少しだけ作ること。
撮影場所を変え極力静かな空気を作り、窓際に後ろ向きで座ってもらうところからはじめ、
お子様がこちらを向いたタイミングで、まだまだ不安な表情を見守り包み込むような家族の形を作るため、
遠くからそれでも極力小さな声で3人の距離感、目線、パパとママの手の調節をしていきました。
夫婦の距離に照れてしまったパパ、そんなパパを見つめるママ、そんなふたりの暖かい表情の中に静かにたたずむお子様、
この3人を強調するために切り取る部分、しかし重ねた手は必要なポイントであるので必ず入れること。
一歩寄る、その代わりに、最大限離れた場所から望遠レンズの力を借りて寄りました。
この寄り家族の姿は、この子の為に作った形です。
無理はしなくてもいい。ありのままで。
「大丈夫。」ただただ、そのメッセージを込めて。
わたしも、佐々木も、ご両親も同じ気持ちであったと思います。
愛情と包容力を1枚として。
撮影の最後には笑顔を見せてくれてほっとしましたが^^
家族写真の全てがヨリの構図になるものではありませんが、75cutの中にその家族が溢れるものに、その為に出来る限りの空間をコーディネーターと作り、そしてカメラマンの心のリミッターを解除して寄り添う、そうしてすべてがぐっと寄って閉じ込められる、そんな凝縮された1枚があってもいいのではないかと思います。
浦安店の主題において、またわたし自身も考えるきっかけとなりました。
互いに切磋琢磨をしながら、今ある時間、この場所で、大切な姿を残してゆければと思っています。
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