店舗フォトジェニック集
Photogenic
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Best of Fujita July.2017
投稿日:2017/8/28
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表情は言葉よりも感情を語ります。
その表情のみを余分な情報なしに切り取り、残すのがクローズアップ写真です。クローズアップで写し出される表情は被写体の「心」を表しています。
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でも、この写真はあえて“無表情”で撮りました。
笑顔や泣き顔というはっきりした感情のあらわれた表情ではなく、無表情。
それは被写体のどんな心を表しているのか?という疑問があると思います。
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映像の勉強をしていたときに教わったことですが、映像で無表情のシーンというのは、観客が自由に被写体の感情を想像できるものだそうです。
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悲しいのか、退屈なのか、ぼんやりしているのか、何かを決意しているのか。
無表情とは心の中で何かを物語っている顔です。
その心の中を察知するための言葉も表情もないことによって、その人物像を見ている側である私たちが自由に想像をする「余白」が生まれます。
そこで人は、自分の心情を重ね合わせて、自由に想像をします。
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クローズアップは原本にインパクトを出します。それも、はっきりと目の合うものはより印象的になります。
私はその中でも、無表情のクローズアップはインパクトが大きいと思っています。
そういう写真がなぜだか見ている側をドキドキさせ、印象に残らせてしまうのは、こちらに想像を促す「余白」があるからかもしれません。
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映像では前後のストーリーがあり、そこからの無表情で感情を物語りますが、写真では一枚が全てです。
もちろん原本の中の一枚なので前後の写真はありますが、その一枚のためというわけではありません。
そのため、この一枚でどのようにストーリーを感じさせ、印象的に見せるのか、無表情に色付けをする動きを工夫しなければいけません。
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顔の半分を隠していますが、微かに片目は見えるように、手の位置やカメラの位置は微調整しました。片目だと、人の顔としては違和感が生まれてしまうからというのが理由のひとつです。隠しすぎてしまうと、手に持っている新聞の存在感が出すぎてしまいます。
また、隠されている方もかすかにみえることによって、「両目でこちらを見ている」インパクトが生まれます。
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被写体の彼は、目鼻立ちが整っていて、細い線の中性的な顔立ちでした。
柔和な表情で、見た目通りの優しくて穏やかな子でした。
でも、この写真からパっと感じる彼の印象は、優しさというよりも何か心の強さを感じます。
それはやっぱり、「目」に強さがあるからだと思います。
目の形に何か大きな特徴があるわけではないのですが、力を感じるのは、彼が照れたりせずにまっすぐこちらを見つめているからです。
顔を隠すという行為には、「怯え」や「恥じらい」などの意味があったりもしますが、彼の表情からはそれが感じられません。
どのように撮られるのか、私が何を撮りたいのか、わかっていたからなのか。特に説明したわけではないのですが、こちらの意図に彼は答えてくれました。
この写真はカメラが近づいてきても戸惑わない彼だからこそ撮れたものです。
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目は口ほどにものを言うといいますが、彼自身に漂うやさし気な空気の中でも、ちゃんとこちらを見据える迷いのない眼差しは、彼がしっかりした芯を持っている人であると語っているように思います。
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