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始まりの光
投稿日:2025/4/30
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「始まりの光」
この一枚は、いわば「時間の静止」である。
画面中央に眠るのは、生後わずか二週間の女の子。新生児特有の、どこかまだこの世界に馴染みきらない表情を湛えながら、すやすやと深い眠りに落ちている。眠っているというより、「守られている」という表現がふさわしいかもしれない。
赤ちゃんの体を包み込むのは、ニューボーン用のおくるみと、ベージュの小さな帽子。どちらも無地で、意図的に主張を控えた色と質感だ。赤ちゃんのやわらかな肌のトーンと調和し、視線を自然とその呼吸の静けさへと誘導する。
特筆すべきは、両親の手の添えられ方である。パパとママ、それぞれの手がそっと赤ちゃんの体に重なるように置かれている。それはまるで「大丈夫だよ」と、この世界への最初の約束を交わしているかのようなジェスチャーだ。手の大きさの対比、温もりの重なりが、親子という目に見えない絆を視覚的に表現している。
そして光。写真全体をやさしく包む自然光が、このシーンにさらなる奥行きを与えている。時間帯はおそらく午前中、南からの斜光だろう。窓越しに差し込む柔らかな光は、赤ちゃんの額や頬を淡く照らし、その肌の透明感までも写し取る。これは技術ではなく、感性による仕事である。
この写真は、ただの記録ではない。家族という最小単位の始まり、言葉を超えた愛の構造を、一枚の光と構図に閉じ込めた詩である。
photo by tajimaru
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