マタニティフォトを撮るとき、
私はいつも「美しい」だけでは物足りないと感じてしまいます。

そこには、命を宿したひとりの女性の強さと、まだ見ぬ子を思う祈りのようなものが確かにある。
その深さまで写し取れたとき、はじめて一枚の写真が“記録”から“作品”に変わるのだと、私は思っています。

今回挑戦したのは、「光をつくる」ことでした。
LEDライトを天の川のような光のデザインのゴボ選びを、スタジオの闇の中に描いていく。
ただ照らすのではなく、光で空間をデザインし、そこに彼女を包み込むように配置する。

光はただの照明ではなく、祝福のような粒子にもなり、未来を指し示す星図にも見えました。

ロケーションには、普段はあまり光が届かない、少しトーンの暗いインテリアを選びました。
空間に明るさがないことで、光の存在感が浮かび上がり、ママさんのシルエットにより深いドラマを与えてくれます。
露出はあえて光を基準に設定し、肌のトーンやドレスの階調はやや抑え気味に。
そのぶん、光のラインが立体感と静寂を演出するように組み立てています。

彼女が光の中にそっと立った瞬間、カメラのファインダー越しに“語らずとも伝わる強さ”が宿ったのを感じました。
命を宿すということ、守るということ――
それは、決して派手ではないけれど、写真のなかで最も輝く力です。

「光で遊ぶ」という言葉は、あくまでスタート地点でした。
結果としてこの写真は、光で祈りを編むような時間の中から生まれた一枚になりました。

この一枚を通して、「光とは何か」を、またひとつ深く見つめ直す機会になった気がします。

“Drawn by Light”　光に導かれて

 

 

 

 

Photo by Chiba
Hair & Makeup by Sumisawa
Written by Chiba