店舗フォトジェニック集Photogenic

近づきたくて

2019/4/6

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Photo by Natsuko Takagawa

Coordi by Kaori Kobayashi

 

 

「彼に近づきたい」

 

そう思い、望遠で撮ることを決めました。

 

 

 

私はライフスタジオで撮られる写真が好きです。

きれいで可愛くて、というのももちろんですが、もっとその人の内面にせまった、その人を表しているような写真が好きです。

私自身はその写真に写っている子やご家族を知らないけれど、「きっとこういう子なんだろうな」と、その被写体の見た目以外の何かが第三者に伝わってくる、そんな写真が好きなのです。

ライフスタジオの写真分析やフォトジェニックを見て、今まで何度もそんな写真に心惹かれてきました。そしてそのたびに、「どうしたら私もこんな写真が撮れるんだろう」と思い悩みました。

 

 

Another meの撮影にも参加させていただくようになって、その子の内面を表すような「もう一人のあなた」を撮りたいと思っても、想いだけではなかなか上手くいきません。

ずいぶん長い期間、同じことで悩んでしまったと焦り始めたタイミングで、先輩方に写真の話を聞く機会がありました。

 

まずはじめに、明暗差の話。

1枚の写真の中に明暗差があると、立体感が生まれ、写真に奥行きが出る。

それはカメラマンデビュー前から今まで、何度も聞いた言葉でした。

 

立体感が生まれるのはわかる。

奥行きが生まれるのもわかる。

でも、手前に物を入れるから奥行きが出るんでしょ?

明暗差で奥行き?

と、「光の層」を認識することと、その層の効果がわかっていませんでした。

 

そのため、実際にロケハンをしながら「光の層」を説明していただきました。

「明るいところ、少し暗いところ、暗いところ、少し明るいところ、1番明るいところ。

その光のグラデーションが、光の層。この層その物が奥行きを作っている。

だから、平面である写真で奥行を出すには、この光の層を写真に写さなきゃいけない。」

手前に物を写し、奥に物を写す理由が、光を写すためでもあることがやっと理解できました。

 

 

次に、被写体の柔らかさの話。

自分の撮った写真でフィードバックを貰った際に、「被写体が固くない?」との指摘を頂きました。ポーズも、雰囲気も、空気も。

 

「まっすぐ立ってるだけではもちろん固いし、ポーズをいかに崩すかがポイント。

首ひとつ傾げるだけで、肩も傾く。関節や重心まで丁寧に。動作の途中で撮るイメージ。

良い写真は、被写体は柔らかいんだよ。」

 

また、その話の流れで、撮影者の存在を強く感じるとの指摘も頂きました。

だから、固く見えるとのことでした。

その固さが、被写体の「らしさ」を見えづらくしているのかな、と思いました。

 

 

上記の話を聞いてからは、「明るい、暗い、明るい」「固い、くずす、途中」と、撮影中に呟くんじゃないかというくらい、ぐるぐる考えながら日々の撮影を行いました。

 

 

 

そして、今回の写真の彼に会いました。

彼はハーフ成人を迎える10歳の男の子で、とても久しぶりにライフに来てくれていました。

よろしくね、と挨拶をすると、何だかクールな様子。

仕草や口調から、それが緊張や恥ずかしさからくる姿だとういうことがわかり、自分の10代の頃を思い出しながら、成長の最中にいるんだろうなと、何だかあたたかい気持ちになりました。

 

そんな彼をどのように撮ろう。

考えながら2階にあがると、通称ウニョンハウスから強い日差しが差し込んでいました。彼はサッカークラブに所属しているとのことで、日に焼けていました。日に焼けた肌をこの日差しに当てたら、コントラストが綺麗だろうな、とぼんやり考えながら、まだ日差しが斜めに差し込んでいる時間だったので、真っ直ぐに差し込んでくる時間になったらここで撮ろうと決めました。

 

1シーン目は、まずは緊張をほぐそうと、とにかく雑談しながら、笑いながら、ふざけながら撮影を進めました。

まだまだ緊張しているのは感じながらも、少しずつ笑顔を見せてくれていたので、「どこまで近づいて平気かな」と探る意味と、「物理的に近づいたら心も近づけないかな」と期待を持って、1シーンの終わりに標準レンズを持ってぐっと寄りました。

すると、彼に少し力が入ったのがわかりました。そんな彼を近くで見て、私も緊張し、息を止めてシャッターを切っていました。

 

 

私は彼の雰囲気が好きでした。

緊張して、少し気だるそうな、クールな雰囲気も。

実際、本当に気だるいんだろうな、という部分も。笑

それでも応えてくれる優しいところも。

 

「習い事だから行ってる」というサッカーも、

学校の授業はどれも好きじゃないというところも、

きっと他にもっと楽しいと思ってることが彼にはあるんだろうなと思いながら聞きました。

そんな彼に興味が出て、「もっと近づきたい」と思いました。

 

でも、ぐっと力を入れさせては意味がありません。

力の抜けた、そのままの彼に近づきたくて、彼に私の存在をなるべく感じさせないように、望遠で撮ることを決めました。

 

 

3シーン目。

ウニョンハウスにまっすぐ日が差し込んだので、彼にそこでなるべく楽な姿勢、うつ伏せになってもらいました。「柔らかさ」を出すために。

そして私は少し離れて、車の奥からカメラを構えます。

反対側からでも撮れたのですが、そうすると後ろ側が暗く落ちてしまい、彼のイメージに合わなかったのと、「段々暗くなる」という光の層が撮れないと思い、車側から撮ることに。

 

そして彼に、話しかけながら、彼が退屈そうに窓の上の方を見ようした瞬間にシャッターをきりました。

退屈そうにするけど、私たちの声かけに答えてくれようとする、彼の内面が少しでも写真に写ればいいなと思いながら。

 

 

この写真が、実際に彼の内面に近づけたかはわかりません。

それでも、私は撮影を通して、その子の心に近づきたいなと改めて思いました。

近づけるように、そこで見えたその子の魅力を写真で表せるように、これからも、写真と人と向き合っていきたいと思います。

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